寝坊⇒今日ないよ☆

yuri9.jpg


タイトルは昨日の出来事。

まさか自分がこうなるとは…。

最近そそっかしいのです。どうしたことか。

絵は、あきた^q^←この顔文字使ってみたかっただけなのです。

マウスが勝手にカタカタぶれます。もう寿命なのでしょうか…?

追記:続きから拍手レスです!⇒Kさま

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おひがんの話 2


「一体だれが…?」

はちは持参のぼた餅を、見覚えのないワンカップの隣に置いた。
そして、手掛かりを探るべくそれに手を伸ばした。

その時。



「こんの泥棒が!」

鈍い音に少し遅れて、はちはその場に伸びてしまった。



「はち、起きてください!」

背に感じた砂利の感触。
西の空が茜色に染まり、はちは慌てて上体を起こした。

なぜか縄らしきもので両手が後ろ手にくくられているようだ。
それだけではない。縄の先が背後の、背の低い石柱に繋がれており、立つ事すらままならない。
しろも隣で「ふぬぬ…!」と気合を入れているが、外れないようだ。

はちももがくが効果なし。
世界ではなく墓地の中心で、愛ではなく助けを叫んでいると、向かいの墓の脇から人影が現れた。


「ついに捕まえたぞ。この墓守、牡丹の目を盗み、あろうことか黒川家の供物に手を出そうとは。
 仮に閻魔大王が許そうとも、あたしが許さない。墓荒らし、そこで反省するんだぞ!」


現れたのは両サイドで髪をまとめた、袴着にブーツの少女であった。
砂利道を力強く踏みしめ近づくや、二人を見下ろした。



「はち、多分この子、憑者ですよ。」

しろが小声でささやいたが、はちには余裕なく。

「誤解だ!墓荒らしなんかじゃねぇ、オレは黒川は…」

「問答無用!墓前で黒蝶堂堂長に懺悔すべきだ!」

「だから、オレが堂長だっての!」

「嘘はもっとうまくつくものだぞ!」

少女が厳しい表情でビシッと突き出すは、戒名や梵字の書かれた木片、卒塔婆であった。


続きです⇒おひがんの話③

おひがんの話

【おひがんの話】

長い長い登り坂の先、遥光の街が一望できる小高い丘の上には、故人のための集合住宅地が広がっている。


「気持ち悪いほどあったけぇな。」


「暑さ寒さも彼岸まで、ですね。」


三年前に黒蝶堂を去った二人の、久方ぶりの墓参り。ゆりに許可を得、昼下がりのこの時間帯、黒蝶堂表の札を裏返してきている。夕方には帰る約束だ。


はちの手に提げたバケツ内の水が、歩く振動で揺れる。箒を手にしたしろが、吹き抜ける風に舞い上がる髪を押さえ、眩しそうに目を細めた。



小さな石。ここに眠る、彼。


手際よく掃除を行い、墓前で手を合わせる。
線香の白く細い煙が、次から次へと空の青に溶けていき、今までの不孝を詫びて帰路に就く。





…はずだった。





「なんだこいつは!?」




三年ぶりの地は、豹変して彼らを迎えた。


そこには『供える』の域を越えた、数々の供物と、種々の草木に埋もれた、黒川家の墓があった。



「黒川家の親戚急増現象ですね!」


「んな報告は受けてねえぞ。」



はちは呆れたようにため息を吐いた。


この地を訪れ、掃除のみならず、これほどまで大量の供え物までする人物に、心当たりがない。花の統一性の無さから、時を隔てた複数人の仕業だろうが、一体何のために?


確かに、三年前までは無かったはずなのだ。


はちは、かすかな頭痛に襲われていた。


続き⇒おひがんの話②

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

はこの話

【はこの話】

「この暗い世の中を変革するには、若者達の笑顔が必要なんだよ。笑い声を聞けば、人はたちまち元気になれる。」

「一体何に使うんスか?」

黒蝶堂にふらりとやってきた一人の男。
黒いコートに身を包んでおり、帽子を深くかぶっている為、表情はともかく年齢さえも不詳の、いかにも怪しげな男だ。

堂長席の前に進んだ男は、はちに声をかけるや否や、すらすらと語り始めていた。



そして話は中盤に突入した頃合いである。



「君もよく耳にしているはずだ。加工され、いたるところに流用され続けているのは、君と同年代の若者たちの声さ。」

はちは眉をひそめた。
思い当たる節がいくつか。ただ、それは推測の域を出ない。
だがそれを確認するほどの労力が、はちには惜しかった。

「悪くない話だろう。君達は何のリスクも無い。私が声を蒐集して、欲している業界に提供する。もちろん、君達には相応の代価を支払うよ。」

「相応の代価?」

言うまでも無く黒蝶堂は財政難である。
目の前にちらつかされた金銭の話題に、はちの胸は悔しくも高鳴った。

「見てもらった方がわかるだろう。」

というと、男は赤い箱を取り出した。

「そこの白い青年、ちょっと笑ってみてくれ。」

奥間で昼食の準備をしていたしろは、ふいに声をかけられながらも

「こう、ですか?」

にこっと笑顔を作った。

「声を出してもらってもいいかな?」

しろははちを戸惑いの表情で見たが、すぐに自然な笑い声をあげた。
すると、ぴぴっと機械音が鳴った。

「ほう、82segか。素晴らしい。堂長さん、あんたもいいかい?」

「おもしろくねぇのに笑えと言われても。」

「物は試しだ。」

はちは押しに屈し、乾いた笑いを発した。

「0.5seg…か。」

声音に明らかな苦笑を浮かべた男に、はちは更に眉を寄せた。

「それをどうするんですか?」

箱の側面に表示された数値を指差し、しろは問うた。

「箱一つ当たり100seg溜まったら、出荷するんだ。内容量に応じて、欲しがる機関も異なるから、人数や質を、取引の時に掲示しているんだ。」

「なるほど。」

「で、報酬はいくらなんだ?」

はちは机に肘をつく。
すっかりご機嫌斜めになってしまったようだ。

「売却価格に準じている。あとは、segの大きさで配分する。」

「segってのは?」

「笑いの単位だよ。声質・声量その他の要素の平均から算出している。もちろん、数値の高い方が、上質な笑いってわけだ。」

「よくわかんねぇな。」

「堂長さんのようなお人には、こちらがお勧めだ。」

と言って、商売人の男が取り出したるは、青い箱。

「こっちは驚異を蒐集する箱だ。他にも、落胆の茶、悲鳴の黄なんてのも揃えてる。御望みの物があるならお答えするぜ。」


流水のようにすらすらと歌い文句を繰り出す男は、机上にずらりと箱を並べ、
片目を出して、はちに迫った。

その眼はギラリと、鋭い光を放っていた。

「どうだい堂長さん。悪い話じゃないはずだ。多くの若者が、この事業に協力している。手軽に金になるし、費用はゼロ。こんなにおいしい話はそうそうないぞ。」

男の気迫に押されつつも、はちは一息つき、

「遠慮しておく。」

きっぱりと、断った。


「そうか、興味があれば、また連絡してくれ。」

男はあっけないほどすんなりと身を引き、抑揚の無い声を零した。
そして、胸元から出した連絡先の書かれた紙を机に置き、黒蝶堂を後にした。

「『うまい話』には、必ず裏があるもんだ。」

男が堂を出ていったのを見送ると、はちは背伸びを一つし、傍らの用紙を拾い上げた。

「『情報統括統合操作処理センター営業部』…ね。」



「誰が統括してるのでしょうね。」

一部始終を聞いていたゆりが、本棚の上で呟いた。

「どっかの偉ぇ人じゃねぇの?存じねぇな。」

「大衆人類の終焉は、すぐそこに迫っているのかもしれないわね。」

ゆりは微かに笑った。

「何を大げさな。」

こめかみを押さえ、はちは口元をゆがめた。

用紙を引き出しにしまい、奥間に進み襖を開くと、ちょうど、歓声が響いたところだった。
表示されるテロップと、お決まりのタイミングで響く効果音。
先に奥間へ戻っていたしろはその向かいに座り、騒がしい箱の中とは対照的に、ぼんやりとそれを見つめていた。

しろがはちの気配に気づき、

「もう昼食の支度が出来ますよ!」

振り返って朗らかな顔で、人差し指を立てた。



はちは溜息をつきながらも、

「お前は空気は読めねぇが、それに呑まれる事も無ぇんだな。」

安堵の表情を浮かべた。

しろは、珍しいはちの様子を怪訝そうに一瞥し、

「失礼です!僕だって空気の一つや二つ、軽く読めますよ!はちに言われたくないです!」

唇を尖らせ、反論した。


少々の間が、辺りを支配した。




そして戦いの火ぶたが、切って落とされてしまった。

「そういうところが、読めてねぇってんだ!どうみてもオレは今、良い事言ったろうが!『僕らは大人になってしまったんですよ』位言えねぇのか!」

「はちまでそうやって思考を操作しようって言うんですか!?僕は流されませんよ。僕には僕なりの考え方があるんですから!」



二人が取っ組み合いの喧嘩をし始め、ゆりに正義の鉄槌を下されるまでは、さほど時間を要さなかった。


「自我の強度は認めるわ。次は譲歩を覚えて頂戴!」


彼女の瞳は、強い光を放っていた。
正座をさせられた二人は、ただただ、頷くしかなかった。




【了】

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

まいごの話


【まいごの話】

平日の、のどかな昼下がり。黒蝶堂には、思いも寄らぬ客が来店していた。

「あの子、どうしたんですかね。」

しろの視線の先には紺色の制服を着た、幼い女の子が表通りに佇んでいた。

その表情には遠目でもわかるほどの動揺と、焦りが浮かび、辺りをキョロキョロと見回している。

「ほっとけ。こんな街外れだ。保護者が近くにいるだろ。」

はちは席に着き、しろの淹れたコーヒーを口に運んだ。

ゆりに命ぜられた、堂内の書物を仕分けするという作業は、ゴール見えず。

作業の合間合間に、別の仕事が入り、結局終わりが遠ざかるという事態に陥っていた。

はちがその愚痴を零す前に、しろは目にも留まらぬ速さで移動し、少女に声をかけていた。



そして、冒頭に戻る。



「だから、名前と住所を言えっての!」

警察の取調べのように怒鳴りつけたはちの前で、泣きじゃくる少女。



そのとき。



はちの額に、ずっしりと重量のある辞書が特攻してきた。

「子供でも立派なお客様なのよ。邪険に扱う姿勢は許されないわ。」

いつもの本棚の上から、ゆりは言葉を投げつけた。

はちは額をさすりながら、彼女をじっと睨みつける。

もちろん、彼女がそれにひるむはずもない。

「そうだ。お菓子があったんです!よろしければどうぞ?」

涙を零し続ける少女に対し、奥に戻っていたしろ。

彼が差し出したのは、可愛らしい包み紙に入った、チョコレートだった。

「しろ!それは私の・・・」

珍しいことに、ゆりの表情に焦りの色が見えた。
彼女の大好物である、『ちょこれぇと』である。

ゆりが止める前、既にチョコレートは少女の手に渡っていた。

「あ、ありがとう。」

泣き止んだ少女は、涙を拭うこともなく、しろに礼を言った。

「あのお姉ちゃんにも言ってくれるかな?」

と言うと、思わず本棚の上から下りてきたゆりを示した。

少女は頷き、
「ありがとう、おねえちゃん。」

恥ずかしそうにうつむき、チョコレートを握り締めた。


「と、取るに足りないわ。同種の嗜好を持つ者へ嫌悪感を示すのは、憑者として回避当然の動作なのだから。」

難語の羅列に少女は首を傾げ、答えを求めるがごとく、しろを見上げた。

しろは少女の目線の高さに背をかがめ、

「どういたしまして、と言ってるのですよ。」

微笑んだ。



それからしばらくして。

黒蝶堂の重たいガラス戸が、表側から開かれた。

「もう、探したんだから!」

母親と思しき女性の顔は、少女を見るや否や安堵の表情に変わった。
少女は一瞬動きを止め、すぐに駆け出した。
母親の腕に飛び込むと、少女の言葉に出来ない言葉が堂内に洩れて響いた。

「そんなに泣かないの。あ、そうそう。今お弁当屋さんで煮物をもらっちゃったの。帰って食べようね。」

少女を諌めると、

「すみません、娘がお世話になりました。」

「ああ、たいしたことは何も。」

はちの返答に、母親は会釈をして、堂内を後にした。

「よかったですねぇ。」

しろが見送りから帰ってきた。

「弁当屋までなんて、10歩くらいじゃねぇか。よく不安になれるもんだ。」



「簡単なこと。問題なのは距離じゃないのよ。ここにいるかいないか。ただそれだけのことなの。」

ゆりは腕を組み、はちを見上げた。



「ところで、どうして子供って、はぐれてしまうのでしょうね?」

しろが右手の人差し指を立てた。

するとゆりは、


「ちゃんと見てないと、連れてかれちゃうのよ。特に、『何者かが見えてしまう』子供はね。」


表のガラス戸を開いた。

はちに頭痛が走った。いやな予感がした。

「おい、どこに行く!?」

思わず問うと、


「安心して頂戴。散歩に行くだけよ。『ちょこれぇと』を調達しにね。」

三日月形の口元で、綺麗に笑った。

「なら僕もお供します!」

しろが笑い、ゆりの隣に進んだ。

堂を出る寸前。

「はちの想像してるような野蛮なことは、しろの顔に免じてしないわ。絶対に。」

彼女は、誇らしげな顔ではちを振り返った。


【了】

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

ゆきの話

【ゆきの話】

「はち!見てください!」

朝方、しろの嬉々とした声音で目が覚めたはちは、少しの間ののち、布団から飛び上がった。

開けられた二階のカーテンの向こう側。
視界を横断し、上から下へ次々に降下していく白色。いつもより肌寒い空気。

駆け寄り、勢いよく窓を開ける。
そこに広がっていた銀世界。

「やべぇ…!」

寝巻を脱ぎ捨て、いつもの服を引っ掛けながら部屋を抜けた。



屋上への扉を押すと、予想通り真っ白に染まっていた。
躊躇なく踏み出すと、さくさくと雪を踏みしめる音が耳に届く。



後ろから聞こえた扉を開く音。
振り返った途端、視界が白で覆われた。ひんやりとした感触が遅れてやってきた。

「おはようございます!」

しろの手に握られた、小さな雪玉。
挨拶代わりに連続で発射されたそれは、見事にはちの顔へヒットした。

顔を拭い、青ざめた顔をしたはちは

「お前!ここに置いていたやつらはどうした!?」

しんとした空気に響く、どなり声を上げた。

「はちの『なんちゃって家庭菜園』ですか?寒そうでしたから一階に持って降りましたよ。」

「よ、よかった…。」

返答に安堵したはちの顔に、再び雪玉が飛んできた。

テンションの降りきれたしろに、『自重』という言葉は存在しない。
ゆりに叱られるまで、彼の猛攻にはちは悩まされた。



【了】

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今日は何の日でしょうか?

きょうは三月八日!

はい、「はち」の日ですね!

ご存じない方もおられるので説明しますと、

我が家の一応主人公ポジションである、「黒川はち」という奴がおるのですが、

そいつの名前にちなんで、毎月八日を当ブログでは「はち」の日に設定しておるのです。

ちなみに前回二月八日は、記念すべき第一回目と言う事で、登場人物欄紹介の絵を描きました。

一か月が立つのは本当に早いガクガクブルブル

今回もイラストです。

はちのひはち2

「まったく、今日も今日とて憂鬱な気分だぜ…。」

はい!というわけでね、

いつもと同じような絵で申し訳ないんですけど、

こやつはこういう表情の星の元に生まれてるので、仕方がないのです。
たまには良い思いをさせてやりたいものですが(ぉ


とあるラノベのおかげであんなに有名になった「憂鬱」の漢字が未だに覚えられない。
拍手ありがとうございます~♪眠気も吹き飛ぶ勢いです!

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そつぎょうの話

【そつぎょうの話】

「はっきりした区切りってのは、なかなかねぇもんだ。」

桜にはまだ早い、遥光高校の校門前。カメラ片手に、主役に負けず劣らず、美しく着飾った保護者たち。

はちとしろは、写真撮影に駆り出されていた。

町内会の役人と名乗る初老の女性がやってきたのは、今から三日前の事。
遥光町内の卒業式特集を、次回の広報誌に掲載するという。

「広報誌?」

疑問符を浮かべたはちに、婦人が差し出したのは、見覚えのある回覧板。

「これは、私たちが『ろーごのたのしみ』で書いてるんだけどね。たまには若者にも、お手伝い願いたいのさ。」

ようは人手が足りないということらしい。
見ず知らずの学生の晴れ舞台など、興味がない。
第一このご時世、保護者でも兄弟でもない自分は、不審者に思われる可能性だってある。
はちは懸案し、断るはずだった。

…が。

「あんたは本当に、伊織さんにそっくりだよねぇ。あの人はちょっと変わってたけど、親切でいい男だったよ。」

祖父の名前を出され、その上軽くウインクされた。

「はは、そ、そうっすか。」

冷や汗が一気に噴き出した。温かな気候であるが鳥肌が立ち、足がすくんだ。

そして、流されるまま今に至る。

「今日を最後に、音信不通になる人だっているんでしょうね。」

感慨深く、しろが呟いた。

「携帯がこんだけ普及してんだ。どこにいたって連絡くらいは取れるだろ。」

デジカメをおそるおそる触りながら、はちはレンズを覗いた。
タンスの奥から引っ張り出した型の古いカメラは、あっさり却下。
その代わりにご婦人から渡された借り物だ。
人気イケメン俳優がCMをしている最新式。
大した説明もなく、「押せば撮れるわよぉ。」との事。

もうすぐ式が始まる頃合いだ。

「そんなこと言って。はちだって長い間、会ってない人いるでしょう?」

「特に用事もないのに会うわけねぇだろ。」

「だからはちは、この街を抜け出せないんですよ。」

しろは自分を棚に上げ、笑う。
はちは、ぐうの音も出ず、祝福するかけらも見えない、気難しそうな表情で校門をくぐった。

突き抜ける青の下で卒業生にとって、普段とは違う顔を見せているであろう、いつもの校舎。

すべてはここから、過去に還元され始めていく。



【了】


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【小話】ねこの話【更新】

【ねこの話】

黒蝶堂の朝。

草色のカーテンを開き、重たい硝子戸を横へ滑らせれば、春先の涼やかな風が吹き込んできた。

はちはあくびを1つこぼし、続けて背伸びをする。

昨晩までの悪天候はどこへやら、すっかり天気も回復し、青空がやけに眩しい。

表通りを自転車で駆け抜ける高校生の表情は、心なしか明るく見える。

「おはようございます!」

朝から元気な事だ。

はちは応じて会釈をし、その後ろ姿を見送る。


絵に描いたような、穏やかで平和な朝だ。







「はち!布団を干しますから、手伝ってください!ほら早く!」
「堂長。今日も仕事が山ほどあるのよ。早く席に着きなさい。」






束の間の幻想は、堂内に目をやれば無残に壊れてしまうのだが。

冷めた目で両者を見れば、しろはキョトンと首を傾げ、ゆりは口元をゆがめた。

はちは苦笑いを浮かべ、ため息をこぼした。

「はいはい只今。しばしお待ちを。」

ふざけて出た、芝居がかった口調は誰譲りのものか。
答えは明白だが、はちは目をつぶり、脳裏によぎった面影を、意識の端へ追いやった。


雑用にひと段落つき、時折訪れる客の相手から一時解放される昼休みは、心休まる瞬間だ。
昼食後、しろは買い物へ出かけた。ゆりの姿はない。
チャンスだ。
気づいたときには、こみあげてきた衝動に突き動かされていた。

屈伸をし、ある程度体をほぐす。準備は万端。
しばらく使っていなかった筋肉を動かす、絶好のチャンスだと、はちは朝から思っていた。
むしろこんなに天気がいい日に、辛気臭い空間に閉じこもるのは失礼な話だ。

「…誰に失礼なんだか。」

自分で自分に突っ込みを入れ、櫻坂神社のふもとを目標地点に、こっそりと走り出した。

息が切れるのに、時間はかからなかった。
それでも走り、黒蝶堂に戻ってきた頃、はちの額には汗がにじんでいた。
珍しくすっきりした表情の彼の視界の端に、何かが映った。

「にゃーん」
誰が放置していったのか、黒蝶堂の表に置かれた自転車。
その後部座席に、小さな黒猫が乗っていた。

「あ?」
「にゃーん」

「はいはいにゃーんにゃーん。」

物欲しげに見上げる金色の瞳が揺れ、軽やかに地へ降り立った。
そして目の前を動かない。
通り過ぎようとしたはちは、仕方なくしゃがみこみその頭をなでた。金色が細まる。地に背をつけ、腹部を見せてきた。
撫でろと言っているらしい。
そろそろ帰らないとまずいが、この子は通してくれそうにない。

はいはいお望みの通りに。と、はちは手を伸ばした。

「お前はいいよな。なんの心配ごとも悩みもねぇんだろ。」
「にゃーん」

「平和な奴だな。」
「にゃーん」

「にゃにゃにゃにゃ?」
「にゃーん」

「にゃにゃにゃにゃにゃ。なるほどにゃ。」
「にゃーん」

その時、最高潮に運の悪い事に、角から人影が現れた。
スーツを着こなした、若い女性だ。
はちと目があった後、うつむき、はちから一定の距離をとって、足早に通り過ぎていく。


なんとも気まずい空気が流れた。


これは違うんだ!ただノリと勢いで、つい言っちまっただけなんだ。

はちは内心に、弁解の渦を作った。


だが、その思いは伝わる事はない。


立ち尽くすならぬ、座りつくしたはち。
女性の姿が見えなくなった頃、今度は黒猫がすっと上体を起こした。

「おい、どうした。」
「にゃーん」

小さな鳴き声を残し、一瞥もくれることなく歩きだしていった。


「なんだかフラれた気分だぜ…。」

「誰に振られたのかしら?」

聞き覚えのある声に、おそるおそる先を見れば、ゆりの姿が。
気づけばその足元に、黒猫が寄り添っていた。

ゆりは黒猫を手で払い、綺麗に笑った。

「いつまで遊んでるつもりかしら?黒蝶堂堂長?」

はちの額に、違う色の汗が浮かんだ。

「いや、その。」
「話は堂内で聴取させてもらおうかしら?」

言葉がうまく紡げないはちは、今更ながら軽率な行動を反省した。

その代わりを買って出たのか、ゆりの傍らの黒猫が、
「にゃーん」と喉を鳴らした。


【了】

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【小話】あめの話【更新】

【あめの話】

「今日も雨ですねぇ。」

朝方の堂内で、しろがぼんやり呟くと、

「たまには大人しくしとけ。」

体を伸ばし、背骨をパキパキと鳴らしたはちは、すかさず釘を刺した。
ここ数日の朝から晩までだらだらと続く長雨のせいで、完璧な運動不足である。

といっても、定期的に運動をしているというわけではない。
じめじめした空気に、どことなく体を蝕まれていく気がするだけだ。
どう足掻いたところで、落ちていく体力に歯止めをかけることはできない事は、日々の生活でいやでも実感させられていた。

硝子戸から見える、カラフルな傘の群れ。気分の滅入りそうな天候でも、人の流れは途絶えることはない。
地面には既に水たまりができており、ランドセルがその上を軽やかに飛び越えて行く。
彼らに声をかける、白い後ろ頭。

…え?

はちが気付いた時、隣にいたはずのしろは表に出、小学生と戯れていた。いつの間に準備したのか、「保護者」の腕章を巻き、手を振っている。小学生の張り上げた挨拶が、戸ごしでも聞こえてくる。

一所に留まれない性分は、時に不可解で不自然な行動を見せるのだ。


向かいの弁当屋から、サラリーマンが連れだって出てくる昼休みの時間帯。
どの顔も若く、スーツが濡れないようビニール傘を傾けている。

「降ってくる雨粒が、飴玉だったらどうですか?きっとおいしいですよね!」

「高度何メートルから降ってくると思ってんだ。さした瞬間、傘が駄目になるだろうが。」

空腹に負けそうになっているはちは、ぎりっとしろを睨んだ。

「ならサイダーだったらどうですか?喉が乾いたら、上を向くだけでいいんですよ!」

「雨上がりに地べたがアリで溢れてもいいならな。」

しろの表情が固まった。

「そ、それは…踏まないようにするのが 『義理と人情』 ってやつですよね…でも…」

アリの天国となった地上を、本気で想像しているであろうしろの前で、はちはため息をひとつ零した。

「なら…」

それでも提案を続けようとするしろを、

「普通の雨で妥協しとけ。干ばつも洪水も起こさねぇで、誰に言われるでもなく適度に降ってくれてるんだ。お前よりもよっぽど空気が読める奴だ。」

言い放つと、しばしの間が辺りを支配した。

しろを取り巻く空気が、がらりと変わった。

「はちには夢がない!まったく、悲しい人間ですよ。」

しろは掌を表に両手を顔の高さに挙げ、演技ぶったポーズをとる。
あなたにはがっかりだ、といった風な口調。
両者は空腹で苛立っていたはちの額を突き刺した。

「お前のは夢じゃなくて、ただの妄想って言うんだ!」

はちは煽られ、牙をむいた。
が、

「やれやれ、幻想に思いを馳せれなくなるなんて。可哀そうな人ですね。」

小馬鹿にした態度を一向に崩さず、いつものように人差し指を立てた。

「お前表に出ろ!」

「はち、外は雨が降ってるのですよ。あなたのおっしゃる、ただのなんの変哲もない雨が。そんな日に傘もささず外に出ようとするなんて、正気の沙汰ではないと思いませんか?」

「茶化すんじゃねぇ!」

立ち上がり、逃げるしろを追いかけ、狭い堂内を走る。

はちの手がしろの肩を掴む瞬間。

「雨の日くらい大人しくしなさい!」

正義の鉄槌が、頭上から降ってきた。
べっとりとした、粘着物質。

「甘いにおいがしますよ、はち。」

みずあめよ。雨に飴。どちらも兼ねられて便利だわ。」

天井の少女としろが、顔を見合せて笑った。

「早くお天道様を拝みたいぜ…ちくしょう。」

眼鏡を右袖で拭いながら、はちは嘆いた。
明日こそは晴れてほしいと願うばかりである。


【了】

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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