【小話】いろのしゅうまつ【更新】

「アメ」

「メロン」

「イロ」

「ロマン」

「ウシ」

「シアン」

「エイ」

「イジン」

「オカ」

「カバン」

指先にかかる編み目を意識し、ふりかぶって飛ばす。それはすぐに戻ってくる。妙な単語を球速に重ねて。こちらもルールに則り、言葉を乗せて放る。返される。さらに、遠ざける。繰り返し、繰り返す。

時は、昼にさかのぼる。

「終わりを望んでいたんですよ、彼は。」

人差し指を立てたしろは、ある書物を堂長席に開いた状態で置いた。あせた紙面に、白黒の人物写真と略歴が配置されている。

「・・・終わりなんざ、望まねぇでもいつかは来るだろ。」

はちは、ある発明家の記事の終末を一瞥し、ため息を吐いた。その言葉に課せられた暗闇を、

「”終末を体感できる方法”を、発見したんですよ!」

しろはキラキラと輝かせた瞳で照らし出すかのように、あるゲームを提示してきた。

それからおおよそ4時間が経過した。絵の具を水で溶かし、薄く引き伸ばしたような淡い夕刻の中、しろは遠くから”終わり”を呼んでいる。一方のはちは、50音順に、思いついた言葉を適当に口にする。
つまるところ、”即座に終わらせること”ができれば、”終わりがみえる”というのがしろの持論であるらしい。

「・・・意味が分からねぇ。」

はちの言葉が一巡した。規定により、試合終了である。「時間」ならぬ「言葉」切れになったなと、はちが肩をすくめたところ、しろが草むらに倒れ込むのが見えた。ボールがグローブからこぼれ、コロコロと転がった。

「なかなか終わりというものは、来てくれないんですね。」

汗ではりついた前髪を横に寄せ、しろは満足げに息を吐いた。

【了】

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

【小話】白い隔たり【更新】

夏場の黒蝶堂、昼間は特に蒸し暑い。
客人は居ない。注文事もきりがついた。堂長・黒川はちと同居人・氷山しろは、後者による現実と妄想のない交ぜになった物語りに、前者が淡々と相づちを打つスタンスで空気と時間を埋めている。

「・・・お前の話は、行間が広すぎる。」

話し始めて数十分後、ついにはちが、飛躍に飛躍を重ねる彼の話に苦言を呈した。すると、書棚の書物を点検していたしろは地を蹴り、堂長席に詰め寄った。勢いよく机に手を突いた音に目を丸くする堂長をよそに、しろは人差し指を堂長の鼻先に指して見せる。

彼は「ならば」と前置きをして目を細める。

「飛び越えて、近くに来て下さい。」

朗らかに笑い首を傾ける彼に、はちはため息を吐くことしかできなかった。

テーマ : 物書きのひとりごと
ジャンル : 小説・文学

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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