【小話】赤青の勝負【更新】

「ちょっと頼まれてくれませんか?」

同居人は堂長席でぼうとしているはちの前にずいと進み出て、あれとこれとそれと、と、指を折り始めた。

「・・・ちょっとまて、買い物か?」

はちの問いに、同居人・しろは頷く。はちは、不信感を抱いた。黒川家の家事一切は過去の諸事情により、同居人・しろに一任されており、掃除、洗濯はもとより、買い物もその中に含まれているはずだ。

だが、しろはにこやかに、爽やかに断言する。

「はち、暇そうですから。」

「・・・悪かったな。」

「たまには気分転換に、外出したら如何?」

書棚の上から降ってきた言葉に、はちは「あぁ」と得心する。おおよそ、ゆりがしろに助言したのだろう。「入れ知恵」といってもいいかも知れない。だが、少女の言葉に逆らって、今までよい結果が残せたことがあろうか。いや、ない。

「・・・わかった、行ってくる。」

机の片づけをそこそこに、はちは指折られた食品や日用品を思い出しながら渡された財布を懐にしまい、買い物へと向かった。



帰宅したはちの手には、買い物の成果が2つのビニール袋となってあらわれていた。
その中身を全てあらためたしろは、

「牛乳とかお豆腐とか、なにか白いものが無いと僕の白さが保てません!」

と、唇をわなわなと震わせて、青い瞳を揺らした。

「・・・消しゴムでも食ってればいいだろ。」

はちは堂長席で、しろの冗句に適当に応じつつ、メモでも取っていけばよかったなとコメカミを指で掻いた。

数時間前、入店した瞬間、何を買えばよかったのか、すっかり頭から抜け落ちてしまったのだ。あれやこれやと思いだす努力はしてみたのだが、頭は痛くなる一方で、一度しか聞いていなかったおつかいの内容を完璧に思い出すのは不可能であった。



後日。

「少し頼まれてくれないかしら?」

昼時、はちとしろがお茶を飲んでいるとき、ゆりが割って入ってきた。彼女が頼んできたのは、細々とした物の購入であった。あれとこれとそれと、と、語る彼女にデジャブを覚えるはちは、慌てて引き出しを開け、紙とペンを取り出す。ペンを走らせ終わると、「これで全部だな」と彼女に内容を見せ、確認をとった。彼女は「いいわ」と許可を出し、黒蝶堂を出て行った。

すると隣に、屈伸をするしろの姿があった。彼は飄々とした風で

「はちには、任せていられませんからね!」

これまた爽やかに笑って見せた。彼はメモを取るはちを横目に、なんの下準備もせず、30項目以上の買い物に出かけようとしている。

「・・・なんだと?」

メモを手に、「お前には負けるわけにはいかねぇ、いや、負けるわけがねぇ」と、はちは眉間にしわを寄せた。

2人の視線がぶつかり、赤と青の火花が飛び散る。
彼らが黒蝶堂を飛び出たのは、ほぼ同時であった。



結果は、引き分けであった。
それぞれが完璧に、彼女の要望を満たす買い物を完了して黒蝶堂に帰ってきた。

はちは腕を組み、じいとしろを横目で見た。

「お前、実は、ひかえていたんだろ?」

「いいえ、ソラで覚えていたんです。」

「・・・覚えるのに、コツがあるのか?」

はちが言うと、しろは首を左右に振って、左手の人差し指を立て、「忘れないでください」と、はちの目を正面からじっと見つめ、大切そうに言葉を紡いだ。

「僕は、一度見たものは二度と忘れないんですよ。」

「・・・そんなことが」

「・・・これは、どういうことかしら?」

はちがしろの言葉に反応しようとしたその時、堂内の奥からゆりが歩いてきて言った。
どうやら先に帰っていたようだ。彼女は両者と、同じ物が二つずつ並ぶ机の上を確認し、

「貴方たちには、協力という言葉を知ってもらう必要があるのね。」

と、冷たい口調で言い放ち、飛び上がって、彼らの頭を書物の角で軽く小突いた。
彼らはそれぞれにうめき声を上げる。
が、彼女は涼しい顔で、机に向かった。机の上に広げられた、同一の2つを両手に掲げる。だんだんと彼女の瞳が赤く染まっていく。2つを胸の前で重ね合わせるようにする。すると、それらは一回り大きな、1つの物に合体したのであった。


【了】

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【小話】雨の日によんでいるのは【更新】

人が本屋に足を運び、書籍を買い求め、読みあさるのには人それぞれ、数々の理由があるだろう。

黒蝶堂堂長・黒川はちは、客人のいない堂内をざっと見渡し、目前の日誌に書くべき事を探す。表戸のガラス越しに見えるアーケードには、朝からしとしととやまない雨が打ち続けている。春の花も散ってしまっただろうかと思いを馳せ、そして、机に頬杖をつく。特段、感傷にふけるようなことでもない。それは毎年のことであり、来年も同じ事が繰り返されるのだから。それよりも今は、日誌を埋める事項の探索に頭を悩ませるのが先決であった。

「来年も今年と同じ事になるとは限らないわよ。」

「・・・だから、人の心を勝手に読むなっての。」

そもそも心を読むなんざ、非現実的なことだと、はちは声の方へ視線をやる。書棚の上には案の定、着物姿の少女・ゆりが座り、分厚い書物を膝の上に広げていた。背表紙が擦り切れていて、タイトルが判読できないそれに

「・・・一体、何の本を読んでるんだ?」

問いかけてみると、ゆりがさらりと答えを口にした。が、はちの耳には謎の呪文としか聞こえなかった。長い上に、聞き覚えのない専門用語が並んでいるようだ。何度聞いても答えは不明瞭で、おおよそ、「脳科学」の内容なのか?と推測できる程度であった。ゆりいわく、何十年も昔に発表された、当時の最先端論文だという。

「・・・一体、いつ使える知識なんだよ?」

「誰が読むんだ、そんな本は」と、はちは首を左右に振った。するとゆりはふわりと地上に降りてきて、その「なんちゃら科学読本」を棚へと戻した。

そのとき、雨音が一瞬大きくなった。気付けば、表戸が開かれていた。
入ってきた客人は傘を入り口に立てかけ、ふらふらと堂内を徘徊し始めた。はちは小声で挨拶をし、軽く会釈をする。後ろで扉が、ゆっくりと閉まる。そして堂長席の前、客人が書棚から引き出したのは、先ほどまでゆりが開いていた、数十年前の最新論文であった。それをパラパラとめくり、ぽんと閉じるとすぐに、客人は堂長席にいるはちの前に来て、「これをください」と請うてきたのだった。呆気にとられたはちであったが、すぐに古いレジスターを起動させ、会計を済ませた。「それでは」と言う客をつい引き留めてしまったのは、小さな違和感を拭いたかったからである。

「・・・あの、どうしてその本を?」

堂長からの焦ったような声音に、客は小首を傾げたが、すぐににこりと笑って言った。

「この子が私を呼んでいるような、そんな気がしたんだよね。」

「たまには雨の日に読書っていうのもいいかなと思って。それに、この本、なんとなく好い匂いがするから」と、2、3理由を述べた客は、機嫌よく黒蝶堂を後にした。

「・・・まったく、よくわかんねぇことってのはあるもんだな。」

本が人を呼ぶはずがないと、はちは日誌の書き出しをそう定めては、再度頬杖をついたのであった。

【了】

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【小話】本心と涙の話【更新】

「・・・欲しいモンを言ってもらえば準備するぜ?」

「だって、本当のことを言おうとすると、涙が出るんだ。」

「それは大変です!今すぐ僕の料理を食べて下さいね!」

なぜか、その日の昼食には客人の彼女を招待した。今日の献立は、しろの手打ちうどんだ。彼いわく、粉から作った方が完成品をゆでるだけよりも安上がり、らしい。経費の本当のところはよくわからないが。
あっという間にたいらげた彼女は、手を合わせ、

「ごちそうさまでした!」

来堂したときの青白い顔からは想像だにできなかった笑顔を弾けさせた。

「・・・で、欲しいモンはわかったのか?」

投げかけた問いに彼女はお茶をあおり、深呼吸を一つして、

「本当のことを言うのは勇気が必要だけど、言います。」

私が欲しいものは・・・



彼女の答えに、オレは向かいの弁当屋を指さした。



過ぎ去った後ろ姿に、呟かざるをえない。

「・・・まだ食うのかよ。」

「心は満たされたみたいでよかったですね。」

「正直が一番ですよ」と、にこにこする隣人に、オレはため息で応じてやった。

「・・・お前って本当に、イイ意味で前向きだよな。」

【了】


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【小話】月兎画廊へのみちしるべ【更新】

画商を名乗る男が黒蝶堂を訪れたのは、午睡にふさわしい頃合であった。黒蝶堂は古書店ではあるが、先代堂長・黒川伊織の趣味の色合いが強かったおかげなのか、壁には様々な絵画や古文書が掛けられ、足下には積み上げられた古書の隣に、制作年代不詳の壷や瓶が所狭しと並んでいる。そんな内容がアダとなっているのか、対外的にも”全体的に古い物を扱う店”として認識されているらしく、時折、珍品を取り扱う”少々変わった”、もしくは、”うさんくさい”と表記するにふさわしい人物が訪れることがあった。

今回やってきた自称・商人が風呂敷から取り出したのは、額縁に納まる一枚の絵画であった。「すばらしいでしょう」と、薄墨で描かれた、月と兎をモチーフにしたそれを掲げて感嘆の声を上げる画商に、堂長である黒川はちは、

「・・・そうっスね。」

と、焦点の合わない瞳を、ばれない程度に右往左往させる。なにせ、絵の価値など皆目見当のつかない、ど素人なのである。絵そのものが漠然と美しいことに文句はないが、それ以上の感想を求められても正直言葉に詰まる、と言ったところであった。画商が

「訳あって手放したい、内密に。」

と続けるところに、不審感を覚えているところでもある。

ふと、軽く背中をつつかれる感覚に、はちは眉を寄せそちらを見やった。すると、なぜか神妙な顔つきの同居人が、口を素早く動かした。

「僕、行きたいところがあるんですが。」

「・・・便所なら、ついていかねぇぞ。」

「縁があると言えば、ありますけど。」

「・・・どういうことだ?」

小声でやりとりをする二人の様子を見ていた画商は、口元だけで笑った。

「また後日改めて参ります。お二人でご相談されたいこともありましょうから。」

と、鼻歌交じりに絵画を風呂敷に包んだ。



「本当に好い音だったんですよ!」

「ここの方が、ゆっくり話せると思って。」

彼女を見つけるのは、意外と簡単であった。「遭遇した」と言った方が、ニュアンスは近い。
はちの視野には細やかな装飾の施された天井が広がり、冷たい枕が、後頭部を冷やしていた。視線を横にやると、パイプ椅子にちょこんと座り、ギターを軽く鳴らすエレベーターガールがいた。

「・・・移送途中に、騒がれなかったのか?」

「私は見つけられない。普通の人間には。」

彼女はぼそぼそとつぶやき、寂しげな旋律を奏で、瞳を伏せる。水玉模様の大きめの帽子が、こてんと傾いた。

はちは思い出す。

彼女の名前は鹿々苑サヱ。鹿々苑百貨店の憑者を名乗る、恥ずかしがり屋を拗らせている少女だ。ゆりの話によれば彼女は、楽器を鳴らしていなければ喋ることもできない、耳を疑いたくなるような特異体質であるらしい。普段は、彼女の憑場である、この広い広い百貨店の中で清掃員に扮して掃除に励んでいるらしく、見つけるのは至難の業だ。

だが本日、彼女は入店してきた堂長達に気がつくとすぐに、その背後に回って・・・

――ここからは、目撃者Sの証言である。

「サヱちゃんの箒の柄がぽっこーんっとはちの後頭部にクリーンヒットしまして、はちは昏倒。僕がここまで運んできて差し上げたんですよ。」

「・・・ほかに、やり方があっただろうが。」

すると彼女は頬を染めた。

「だって、恥ずかしい。」

「・・・は?」

「でも堂長が来たと言うことは理由があるだろうし、でも、面と向かって話すなんて無理だし。」

洋風人形のようなナリの彼女は続ける。はちは思う。人前で箒を振り下ろす勇気があれば、一言声を掛けるくらい、どうということはないだろうに、と。深いため息が出た。

状況から察するに、意識を失った自分は百貨店内の医務室に運ばれたのだろう。色々と考えるのが面倒くさくなったはちは、早々に本題へと入ることにした。

「ここには画廊があったよな。」

彼女は頷く。はちはしろと視線を交わした。

先日、しろは画商が帰った後に言った。

「僕、あの絵画を見たことがあります。昔、伊織おじいちゃんとデパートに行ったとき、画廊に立ち寄りましたよね」と。

「・・・覚えてねぇな。」

「はちも一緒に居ましたよ!」

はちは上着の内ポケットから、写真を取り出して彼女に示した。どこからともなくベースの低い音が流れてきた。サヱは写真を手に、数秒固まった。
そして、

「・・・この子は、今どこに?」

「「「でーん!」」」と複数の音が重なり、吹き付ける向かい風のような重たい音圧が、はちとしろの顔面を襲った。彼らは目を右に左に移動させる。彼女の後ろに、彼女とそっくりの顔をした少女たちによって組織された額奏隊が並んでいた。ゆりいわく、彼女はこうやって、すぐに何かに紛れようとする癖があるそうな。緑色に光る彼女の瞳を前に、はちは頭が痛くなるのを感じていた。



サヱと別れ、黒蝶堂に戻った彼らを迎えたのは、黒蝶堂の憑者・ゆりであった。

「言うまでもないことだけど、商談に応じる必要はないわ。」

堂長席には、昔の新聞が広げられていた。その中央付近、今から20年前の記事に、はちは目を通す。記事の大きさから、あまり大きく取り上げられなかったようではあるが、その文面はまぎれもなく鹿々苑百貨店での窃盗事件についてであり、絵画の特徴を緻密に描写していた。
今回黒蝶堂に持ち込まれた絵画は、間違いなく、窃盗に遭った作品のようであった。

どうしたらいいかと頭を悩ませるはちを前に、ゆりは続ける。

「絵から引き抜けばいい事よ。」

「・・・引き抜くって言っても。」

「それを考えるのが堂長の仕事よ。」

どういう意味なんだと、居間に戻ったはちは天を仰いだ。お縄につきたくはないから、盗み返すことはできない。そもそも、今の画商の手に渡るまでにたくさんの人の手を介した可能性があるから、彼自身、元々が窃盗品だと知らないかも知れない。一方、サヱの様子を思い出すと、元の場所に戻してやりたい気がしなくもない。

「一休さんの虎の絵の話みたいに、外に出てくるのを待ちますか?」

「いや、あれは結局外に出すことができなくて天晴れって話だろ?」

シンクを磨いていたしろが居間にやってきた。その様子を見て、はちの頭にぼんやりとアイデアが浮かんだ。が、その素っ頓狂さに首を左右に振る。

「いいんじゃないの?」

その考えに同意をしたのは、はちの心を読んだゆりであった。はちは言う。

「・・・勝手に心を読むんじゃねぇっての。」



月兎飛び跳ねる深夜の草原が、堂長席に広がった。目の前の椅子には、いつぞやの画商がにこにこと座っている。はちは一言断りを入れ、あらかじめ用意していた、水の張ったバケツを足下に置いた。何の変哲もない、普通の水道水だ。それに絵をかざす。とたん、にこにこしていた画商が怪訝そうに、眉をひそめた。

思いついたのは、シンクに映る反転した食器の絵柄を見たのがきっかけだ。絵画そのものをどうこうするのではなく、中身をどうかすればいいのではないか。そして用意したのが、絵が全て映るような水面を持つ、バケツであった。うまくいくかはわからない。ばかばかしいとは思いつつも、やってみる価値はありそうだった。ゆりの言葉が、後押しとなっていた。

絵を水にかざしてしばらくすると、それはゆっくりと、うっすら墨をひくように水に吸い込まれていった。画商は目を丸くする。実は、はちも同じ気持ちだ。だが、それを表情には出さないようにし、今度はその水を上質な紙に薄く流し入れる。すると、元通りの絵がそこに完成した。

はちは、できるだけ威厳の出るような声音で語る。
誤って、「・・・ありえねぇ」と言ってしまわないように。

「・・・元の位置に、戻した方がいいんじゃないんスかね?」

「いやあ、さすが黒蝶堂さんだ。脱帽いたしました。」

画商は笑って、カラになった額縁を風呂敷に包んだ。その頭上、指を宙でくるりと回す、書棚上の少女の姿があったのは言うまでもない。



後日、黒蝶堂の外にギターを背負ったエレベーターガールが立っていた。

「これ、お礼。」

手短に言うと、彼女は顔を真っ赤にして、来た道を走って帰って行った。大きな帽子が、駆けるはずみで今にも落ちそうである。はちの手には、百貨店内にある老舗和菓子店の名物である、月餅の包みが載せられていた。

取り戻された月兎の絵画は元通り、鹿々苑百貨店の画廊に飾られているらしい。


【了】

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2015年の作品たち

2015年作品まとめ

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凍りつく水玉

半世紀分の秘密

活字中毒悪食人間

思い出したのは

桜色のしらせ

なのはなのうわさNEW!

and more…?

2014年の作品たち

2014年作品まとめ

初めての方はこちらから⇒こちら黒蝶堂

さえざえとした夜12345678(了)

橙の知覚

空の旅

無の背景色

飴色のこうふく

紺碧の攻防

黄緑パラレル

鼠色捕獲作戦

春風のうつり

長尺科白

流行りの警戒色

追加オーダー

橙の魔物

春色の齟齬

きなこの証言

赤い音楽

きいろの逃亡劇

きみどりの正体

本の虫へ紫の差し入れ

白黒の価値

ももいろだまり

四方八方明度の忠告

みせかけの赤色

水の薬桶

氷の真相

しろくろえんせん

杏仁豆腐の飛び降り台

清算の青

背中合わせの隣人

ことばかず

血色の遮断

L判の水晶

雨音の予測

いどけいど

ドーナツはかり

白みがかった本体

疑惑の第一発見者

魔性のレジスター

純金の円和

逓増の罠

若草色の噂話

変幻自在の箱の中

混濁階層

微々々々の黄金週間

碧い知識

赤紫の免許皆伝

持ち帰りの怪

ズレゆく過去

迷いの森の伝言板

今宵の特別枠

濃紺の湖畔

焦茶中毒

一な花丸

白い隔たり

いろのしゅうまつ

藍色ホール

氷上の違和感

薄雲の洞窟

魔法のしろい粉

深緑の旅人

黒蝶堂過去高校小話欠片

赤いメッセージ

コツコツカツカツサイクル

はやるかわ

とりあえず世界を救ってみようじゃないか

気分転換の角度

うらがえしのしかえし

とあるばあさんのかこばなし

書割の背表紙

平和の鏡

黒蝶堂の年末

2013年の作品たち

2013年作品まとめ

初めての方はこちらから⇒こちら黒蝶堂

・水溶性の容疑者

・黒き世界を渡す船

・白い錯覚

・青い希望

・グレーゾーンをめぐる攻防

・灰色の径(こみち)

・金の切望、銀の記憶

・透明の毒

・七色行列と二択道

・紅色ハードル

・橙の回想

・黒く白い捏造

・インク流し

・朝焼けの空色

・赤褐色の旅路

・天然色近未来

・黒褐色の遺物

・蒼色の特効薬

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2012年の作品たち

2012年作品まとめ

初めての方はこちらから⇒こちら黒蝶堂

・道楽息子と電波青年 2012年最初

・”感”と”勘” ゆりと牡丹と四篠境

・分速60mで本物を見抜け! 意外と長編

・白の一害、黒の百害 はちの受難

・案ずるより抜くが早し 

・涼やかさを求めて

・振り返る者、振り返らざる者

・雨中の来訪者

・奇特なセンタクシ

・死亡特需

・黒蝶堂の食卓

・黒蝶堂の食卓(前日譚) 

・帰り道を見失わないよう

・右手に杓子を、左手に包丁を

・鮮やかなる色を

・『てんか』ら『の』た『まわりもの』

・なつやすみをさがせ!

・秋の夜長とサクシな少女

・ハードルの高い百貨店

・そして、転倒する顛末

・しかくからのしかく

・拝啓、バラ色の世界より

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2011年の作品たち

2011年作品まとめ

☆こちら黒蝶堂 最初のお話。

☆黒蝶堂の正月

☆緑茶の話

☆しろとアイスの話

☆しんごうの話

☆冬の朝の話

☆冬の夜の話

☆黒蝶堂のバレンタイン

☆白骨取扱専門店黒蝶堂

☆雨の字面の話

☆雨の日は頭上に注意

☆死に続ける男

☆(よくない)共犯者

☆質流れの数値測定器は、真実を語れるや否や(ソーダ味)

☆夏のギフトは黒蝶堂で

☆夏夜の石畳を砕いて渡れ 鬼桐さん初登場

☆若造の主張

☆鳴かぬなら…

☆月は知っている

☆貴方に神の御加護がありますように!

☆雨降って、地固まる

☆河童の腕の返却は、ぜひとも期限をお守りください(※延長不可)

☆【一見さん】一休みしていかれませぬか?【大歓迎】

☆用法要領を守って、楽しくお使いくださいませ!

☆悪事の温床候補を探せ!

☆幽霊退治は黒蝶堂にお任せあれ

☆嗜好×思考=矛盾?

☆(前)☆(後)

タイトルがカオスになってきた。

☆鬼桐さんと黒蝶堂

つづき⇒☆黒蝶堂の年の瀬

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2010年の作品たち

こちらは、作品保管庫用の記事です。

黒蝶堂とは?

【小話】
☆ねぐせの話 日誌の始まり。
☆せんたくの話 脳にカビが生える話。  
☆コンビニの話 時間は買えるか?
☆えの話 偏屈少年はち。
☆ふくそうの話 皮肉の大安売り。
☆てれびの話 カーリングのルールが、未だにわからない。  
☆しゃれの話 しょうもない。まさに、内容が無いよu(ry
☆しゅーるな話 電波青年は、今日も絶好調☆★
☆うたの話 人間⇔機械。
☆あめの話 雨の日くらい、おとなしく。   
☆ねこの話 ほっとけない。     
☆そつぎょうの話 人生の、目に見える区切り。
☆ゆきの話 家庭菜園を巡る攻防。
☆まいごの話 なだめるには甘い物。
☆はこの話 毛色の違う話。

☆おひがんの話①(完結)
おひがんの話まとめver. 牡丹初登場。ちょっと長編。

☆おひがんの話 後日談 縁側でお茶でもどうですか。どこか殺伐。

☆たけのこの話 にょきにょき

☆たいくつな話 万年筆には、ご注意を。

☆みらいの話 未来新聞は、いらんかね?

☆雨上がりの話①⑧(完結) 傘からお金が降ってきた!はちのモラトリアム。

☆しごとの話 堂長の仕事の前段階。

☆本の話 逃がさねぇよ!

★☆はちの月企画一日一短編★☆

☆こたつと洗濯物、カコの話続編

【8の日企画】
★2月分
★3月分
★4月分
★5月分
★6月分
★7月分
★8月分
★9月分
★10月分
★11月分
★12月分

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【小話】なのはなのうわさ【更新】

「・・・なんのはなしだ?」

「なのはなのはなしです!」

食用と非常食用がありますねと、しろは嘯く。黒蝶堂の片づけをしていたら、すでに夕食の時間になっていた。状況から察するに、どうやら、食卓に並ぶ黄色と緑色について、しろとゆりが雑談を交わしていたところらしい。

「現在ここに並ぶのは非常食用ということね。」

「算盤を弾いた結果ですから、至極当然です!」

僕の料理の腕で、なんとかしますよと、しろはにっこり笑った。手を合わせたオレは、ただ黙って、準備された箸をとって、皿に伸ばす。非常用ってのは、「非常時にでもおいしく食べられる」という意味で、「非常に言いづらいのですが、本当に非常時にしか食べられないですよ」という意味ではなかったはずだ。

「・・・そういう意味でいいんだよな、てめぇら?」

と、念を押したい気分を料理で押し流した。

【了】

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【小話】桜色のしらせ【更新】

両肩にくいこむリュックサックの腕、両手に握る布製の手提げ鞄、そのすべてには、今日この日のために準備した荷物が押し込まれている。

「・・・まったく、なんでこんなことに。」

黒川はちは呟く。

ここは、長い坂を上ってきたところに存在する深見ヶ原墓地である。額に汗が浮かんできた頃、長袖のシャツを肘のあたりまで捲った。夏暑く、冬寒い黒蝶堂にいると、季節の流れを感じることに鈍くなってしまうのだろうかと、眼下に広がる街を眺めて思う。

この事態になったのを、時間を戻して振り返ってみよう。

全国的に桜の開花で賑わい始めた今日この頃、
この街の住人たちに、「遥光の街で桜の名所と言えば?」と言えば、誰でもが「櫻坂神社」と答えるであろう。
しかし、昨日、黒蝶堂を訪れた少女が

「うちもなかなか綺麗だから、寄っていくといいんだぞ!」

と両に結った髪を揺らしたものだから、

「なら、お掃除もしましょうか!」

と同居人の不穏な提案が導き出され、本日に至る。
以上、簡単な回想の終了である。

「・・・確かに桜は綺麗だがな。」

遠目にほころぶ山桜に目を細めつつ、歩みを進める。

「こっちですよ、はち!」

中央広場から少し進んだ場所、黒川家の墓の前で、同居人である氷山しろがブラシを持った手を振っていた。軽く合図を返し、荷物を周囲に下ろして荷を解く。持参したバケツに近くの蛇口から水を溜め、雑巾を絞る。見上げた墓石は、想像よりも随分とぴかぴかに光っていた。

「本腰入れてやってるな。」

朝早くに出立し、先に作業を始めていたしろを見ると、彼は胸を張った。

「当然ですよ。目立ったもんがちです!」

そして続ける。

「終わったら、おじいちゃんと一緒に宴会ですからね。」

ここでしてもいいって、牡丹ちゃんが言ってましたからと、かぶった頭巾の端をきつく縛る彼に、

「・・・あんまり騒ぐなよ?」

あの荷物の量はそういうことだったのかと、はちはため息をついた。
腹も減ったが、とりあえずは、掃除が先だ。
作業着を羽織り、墓石に一歩近づいた。目を閉じ、手を合わせて一礼する。再度目を開き、空を仰ぐと、春の青を背に、着物姿の祖父が笑っているような気が、しなくもなかった。

「ぼんやりしている暇があったら、手を動かしたらどうかしら?」

にじむ世界に、にゅっと顔を寄せてきたのは、黒蝶堂の少女・ゆりであった。唐突に出現し、墓石に腰かけ書物を手に、三白眼を惜しげもなくさらした彼女に、手にしていた雑巾が地に落ちた。ふわりと桜の花びらが、舞い上がって彼女に降り注いだ。

【了】


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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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