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そつぎょうの話

【そつぎょうの話】

「はっきりした区切りってのは、なかなかねぇもんだ。」

桜にはまだ早い、遥光高校の校門前。カメラ片手に、主役に負けず劣らず、美しく着飾った保護者たち。

はちとしろは、写真撮影に駆り出されていた。

町内会の役人と名乗る初老の女性がやってきたのは、今から三日前の事。
遥光町内の卒業式特集を、次回の広報誌に掲載するという。

「広報誌?」

疑問符を浮かべたはちに、婦人が差し出したのは、見覚えのある回覧板。

「これは、私たちが『ろーごのたのしみ』で書いてるんだけどね。たまには若者にも、お手伝い願いたいのさ。」

ようは人手が足りないということらしい。
見ず知らずの学生の晴れ舞台など、興味がない。
第一このご時世、保護者でも兄弟でもない自分は、不審者に思われる可能性だってある。
はちは懸案し、断るはずだった。

…が。

「あんたは本当に、伊織さんにそっくりだよねぇ。あの人はちょっと変わってたけど、親切でいい男だったよ。」

祖父の名前を出され、その上軽くウインクされた。

「はは、そ、そうっすか。」

冷や汗が一気に噴き出した。温かな気候であるが鳥肌が立ち、足がすくんだ。

そして、流されるまま今に至る。

「今日を最後に、音信不通になる人だっているんでしょうね。」

感慨深く、しろが呟いた。

「携帯がこんだけ普及してんだ。どこにいたって連絡くらいは取れるだろ。」

デジカメをおそるおそる触りながら、はちはレンズを覗いた。
タンスの奥から引っ張り出した型の古いカメラは、あっさり却下。
その代わりにご婦人から渡された借り物だ。
人気イケメン俳優がCMをしている最新式。
大した説明もなく、「押せば撮れるわよぉ。」との事。

もうすぐ式が始まる頃合いだ。

「そんなこと言って。はちだって長い間、会ってない人いるでしょう?」

「特に用事もないのに会うわけねぇだろ。」

「だからはちは、この街を抜け出せないんですよ。」

しろは自分を棚に上げ、笑う。
はちは、ぐうの音も出ず、祝福するかけらも見えない、気難しそうな表情で校門をくぐった。

突き抜ける青の下で卒業生にとって、普段とは違う顔を見せているであろう、いつもの校舎。

すべてはここから、過去に還元され始めていく。



【了】


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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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