おひがんの話

【おひがんの話】

長い長い登り坂の先、遥光の街が一望できる小高い丘の上には、故人のための集合住宅地が広がっている。


「気持ち悪いほどあったけぇな。」


「暑さ寒さも彼岸まで、ですね。」


三年前に黒蝶堂を去った二人の、久方ぶりの墓参り。ゆりに許可を得、昼下がりのこの時間帯、黒蝶堂表の札を裏返してきている。夕方には帰る約束だ。


はちの手に提げたバケツ内の水が、歩く振動で揺れる。箒を手にしたしろが、吹き抜ける風に舞い上がる髪を押さえ、眩しそうに目を細めた。



小さな石。ここに眠る、彼。


手際よく掃除を行い、墓前で手を合わせる。
線香の白く細い煙が、次から次へと空の青に溶けていき、今までの不孝を詫びて帰路に就く。





…はずだった。





「なんだこいつは!?」




三年ぶりの地は、豹変して彼らを迎えた。


そこには『供える』の域を越えた、数々の供物と、種々の草木に埋もれた、黒川家の墓があった。



「黒川家の親戚急増現象ですね!」


「んな報告は受けてねえぞ。」



はちは呆れたようにため息を吐いた。


この地を訪れ、掃除のみならず、これほどまで大量の供え物までする人物に、心当たりがない。花の統一性の無さから、時を隔てた複数人の仕業だろうが、一体何のために?


確かに、三年前までは無かったはずなのだ。


はちは、かすかな頭痛に襲われていた。


続き⇒おひがんの話②
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

メニュー
twitter
    更新情報配信中