おひがんの話 2


「一体だれが…?」

はちは持参のぼた餅を、見覚えのないワンカップの隣に置いた。
そして、手掛かりを探るべくそれに手を伸ばした。

その時。



「こんの泥棒が!」

鈍い音に少し遅れて、はちはその場に伸びてしまった。



「はち、起きてください!」

背に感じた砂利の感触。
西の空が茜色に染まり、はちは慌てて上体を起こした。

なぜか縄らしきもので両手が後ろ手にくくられているようだ。
それだけではない。縄の先が背後の、背の低い石柱に繋がれており、立つ事すらままならない。
しろも隣で「ふぬぬ…!」と気合を入れているが、外れないようだ。

はちももがくが効果なし。
世界ではなく墓地の中心で、愛ではなく助けを叫んでいると、向かいの墓の脇から人影が現れた。


「ついに捕まえたぞ。この墓守、牡丹の目を盗み、あろうことか黒川家の供物に手を出そうとは。
 仮に閻魔大王が許そうとも、あたしが許さない。墓荒らし、そこで反省するんだぞ!」


現れたのは両サイドで髪をまとめた、袴着にブーツの少女であった。
砂利道を力強く踏みしめ近づくや、二人を見下ろした。



「はち、多分この子、憑者ですよ。」

しろが小声でささやいたが、はちには余裕なく。

「誤解だ!墓荒らしなんかじゃねぇ、オレは黒川は…」

「問答無用!墓前で黒蝶堂堂長に懺悔すべきだ!」

「だから、オレが堂長だっての!」

「嘘はもっとうまくつくものだぞ!」

少女が厳しい表情でビシッと突き出すは、戒名や梵字の書かれた木片、卒塔婆であった。


続きです⇒おひがんの話③
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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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