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おひがんの話 7


「ほら、さっさと行かねば、日が暮れてしまうんだぞ。」

手持ちの提灯、その中心にろうそくを立て、マッチで火を灯した牡丹は、咳払いを一つ。
しろの裾を引いた。
冷気な笑顔を浮かべていたしろは、

「そうでしたね!」

はっと表情を変え、泡を吹き始めたはちから手を離した。
はちの遠ざかりつつあった意識が、久方ぶりに肺に入ってくる空気で色を取り戻していく。

「いつまでぼんやりしてるんですか?」

不思議そうに、しろがはちの脇腹をつねり上げる。

「いててて、なにしやがる!…はっ」

「はち、もしかして太りました…?」

自らの声で、完全に目が覚めた。
生まれながら持ち合わせていたか、はたまた一緒に成長してきたか。
根付いたツッコミ性分とは、まったくもって恐ろしいものだ。
隣で笑みを浮かべるしろの頬に、冷や汗が垂れていた。

「太ってねぇよ!どこにそんな余裕がある!」




先を歩くしろは、のんきに鼻歌なんて歌っている。

「さっきはありがとな、助けてくれたみてぇで。」

途中から不確かな記憶を手繰り寄せると、牡丹の提案で、しろの冷気が消されたという結論に達した。

思い出すのも、おぞましいのだが。

「別にそんなつもりはなかったんだぞ。」

陽が西の空へ落ち、辺りはゆっくりと月の世界に呑みこまれていく。

「ここでくたばられたら、それを片付けるのはあたしだ。煩わしいのはごめんなんだぞ。
まあ、単にここで燃やして


言葉を切り、マッチをちらつかせる。

残滓を墓に放りこむだけだから、葬式費用はかからんが。」

平然と言い放つ、その口調。


「やはりちゃんとした手順を踏まにゃ、夢見が悪いだろう?」

牡丹ははちの顔を見上げ、にぃっと笑った。

「ま、まあな。」

想像したくない、頭の痛くなる話だ。

「その時がきたら、向こうで安心して惰眠をむさぼるがいい。墓守はここにいるからな。」

牡丹はそう言うと、やけにへたくそなウインクをかました。


続き⇒おひがんの話8

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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