たけのこの話

【たけのこの話】

「どんどんおかわりしてくださいね!」

「またこれか…。」

目前のテーブルに並ぶは、本日の夕飯。
どこを見ても、竹の子、タケノコ、筍。
刺身に煮付け、みそ汁に炊き込み飯。
いくら季節だからといっても、やりすぎではないだろうか。

「向かいのお弁当屋さんに頂いたんですよ。」

嬉々として話すしろは、ここ一週間、食卓に並ぶ献立がまったく同じと言う事実に、気付いているのだろうか。
そして、先のやり取りを朝昼晩、毎度毎度繰り返していると言う事実に、気付いているのだろうか。

「確信犯か…?いや、こいつに限ってそれはないな。」

「何か言いました?文句があるなら、食べなくて結構ですよ。」

笑みを浮かべ、箸をとるしろ。

「文句なんて言ってねぇだろ。ただちょっと飽きたっつーか。」

はちはため息をついた。
嫌いではないが、さすがに続くとつらいものがある。
そろそろ前頭葉辺りから芽が出てきてもおかしくねぇ…ってバカか。

内心自らの妄想にツッコミを入れたはちは、しぶしぶみそ汁に手をつけた。

「あぁ…はちは笹派でしたね。すいません準備できなくて。」

「そんな派閥には属してねぇよ!中国の奥地に仲間が居るってか!上野動物園に帰れってか!?」

はちは思わず箸を机に叩きつけた。

「なら今度、笹取りに山へ登りましょう!」

しろは人差し指を立て、ひらめきのポーズをとった。

「話を聞けぇ!」

中腰になったはちは、食ってかかるように怒鳴りつける。
いつものように、効果は、ない。

「『竹の子族』って流行ったわよね。」

突然会話に加わってきた、向かいに座るゆりの言葉に、しろは頷く。

「まさに今、タケノコを食している、僕たちの事です!」

「定義が違う!脱退申請書を所望する!」

「田家之粉族はそんな紙切れで縁が切れるような、安っぽいもんじゃないんですよ!」

「『田家之粉』ってなんだ?!せめて、『多華埜孤』とかにしてくれ!」

文字が見える目を持つはちは、ツッコミをかます。
どんな仮説でも、つっこまなければ、気が済まない。
性分とは、悲しいものだ。

「画数が多ければ格好が付くってもんじゃないわよ。」

どうやら、ゆりも飛び交う文字が見えたようだ。
正座をし、煮つけに手を伸ばす。
冷静な指摘に、はちはぐぅっとうなる。

「ですよね、姉さん!」

同意を得たしろは、ガッツポーズを決め、勝ち誇ったようにはちを見た。

「もう勝手にしてくれ…。」

どうして飯を食うだけで、こんなにも疲れなければならないのか。
族の中では(も)底辺のポジションに位置づけられるであろうはちは、げんなりした気分で、再び箸をとった。

箸は叩きつけた時のあまりの衝撃に、二つに折れてしまっていた。

【了】

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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