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『夢の中』

【はちの月企画】

お題① 『夢の中』

燦々と照りつける太陽。
つきぬける青い空に浮かぶ、まるで絵に描いたかのような、巨大な入道雲。
延々と続く白い砂浜に、穏やかな波が寄せては返す。

これほどまでに美しい情景。

…であるのにもかかわらず、辺りにはなぜか、人っ子ひとりいない。

「文字通り、プライベートビーチだな。」

はちは度入りの黒いサングラスを右手でかけ直し、そう呟いた。

「はち、これ、見てください!」

声に引かれ、ゆっくりとそちらを向く。
波打ち際で懸命に手を振るは、空色のTシャツを着たしろ。
その向かいには、なかなか立派な砂上の城ができていた。

「うまくできてんじゃねぇか。」

「はい!あとはこれを立てれば完成です。」

しろが笑顔で掲げたのは、見覚えのある黒いケース。
そして、その中から取り出したのは

「お前!それ、オレの眼鏡じゃねぇか!」

「違いますよ。これはこのお城の象徴…つまり、旗なのです!」

「余計なことすんな!」

「旗だけに?」

「はた迷惑だ!」

「よくできましたね!」

「ふっざけんな!」

はちは激しいツッコミの後、しろの手から眼鏡を奪った。
そして美しい波打ち際を、裸足で駆けだした。
後ろから、しろが追ってくる。

だが、追いつかれてはならない。
自分の目と言っても差支えない愛用の眼鏡を、砂まみれにさせるわけにはいかないのだ。

どれほど走っただろうか。
ぐんぐん上昇する気温。荒くなる息。霞む視界。
振り向けば、顔色一つ変えないしろがすぐそこまで迫っていた。

水しぶきを上げる足元。
はちはそれを見、合点がいった。
しろは恐らく、海水で体温を下げているのだろう。

「この、変温動物が!」

叫んだ途端、足がもつれた。
砂浜に打ち上げられた、海藻に足を取られていた。

「…さて、返してもらいますよ。」

しろの手には、ぎらりと光る刃物。
珍しい装飾のされた、彼専用の包丁が握られていた。
そして空色のTシャツは、いつの間にか、黒に青いラインの入った堂長服に変わっていた。


2pカラーしろ



「ま、まるで2コンカラーだな。」

「そうですね。でも、問題ないですよ。」

冷汗を垂らすはちの上へ刃物を振りかざした彼は、口元だけで冷たく笑った。

「これから先は、僕が堂長ですからね。」

腹部への激痛が、体を巡った。

「うわぁ!!!」

カーテンの隙間から、穏やかにさしこんでくる光。
じっとりとした寝汗を、右腕でぬぐう。
突如、覚醒は訪れた。

「なんだ、夢かよ…。」

口調とは裏腹、ほっと、安堵のため息をついた。
ふと、腹部に重みを感じ、上半身を起こす。
…起こそうとしたが、叶わない。
見ればそこに、分厚い本が折り重なって、立派な山が出来ていた。

「やっと気付いたの?鈍感にも程があるわね。」

感じた隣の気配に、背筋を何かが駆けあがる。
首だけを向ければ、傍らに本を置いたゆりが、ちょこんと座っていた。

「これ、てめぇがやったのか?」

「えぇ。感謝してほしいわ。」

体を動かせない程の、大量の本。
おそらく、これを乗せられた時の衝撃が、夢へと反芻されたのであろう。

オレのプライベートビーチを返せ!

と、はちは苦々しい思いを抱きながら、口内で舌打ちをした。

最悪の目覚めだ。

「乗せてくれてありがとうってか?てめぇの嫌がらせに?」

「違うわ。その結果に、よ。」

「まったく意味がわからねぇ。」

ゆりは眉根一つ動かさず、冗談を言っている風はない。

「理解し難いのなら、自らの目で確認しなさい。」

彼女は険しい顔を作り、指を宙へ回した。
すると次々に本が舞いあがり、はちの体は自由を得る。

途端、走る激痛。
ぐうの音も出ないまま、思わず腹部を押さえる。

「止血してあげてたのに、気付かないなんて、助けてあげる価値も無いわ。」

ゆりはそう言い捨てると、部屋を後にした。

「な、なんでだ…?!」

夢が現実と繋がる…なんてあり得るはずがない。非現実的だ。
だが痛みは本物だ。
再び霞む視界、遠くなる意識。
思い出されるしろの冷笑。

すべてが白くはじけ、白に吸い込まれていった。


鳥のさえずり。
背伸びをすると、意識がはっきりとしてきた。
目覚ましよりも早く目覚めると、随分気分が良い。
永い長い、夢を見ていたようだ。

燦々と照りつける太陽。
つきぬける青い空に浮かぶ、まるで絵に描いたかのような、巨大な入道雲。
延々と続く白い砂浜に、穏やかな波が寄せては返す…

本当に、美しい景色だった。
そして、手に取れそうなほど、リアルな夢であった。

と、部屋の外に気配を感じた。
入ってきたのは、

「ゆりちゃん、おはようございます。」

「おはよう、相変わらず早いわね。」

ゆりは分厚い本を持っていた。

「御機嫌だけど、いい夢でも見れたのかしら?」

枕元に座ったゆりは、口元で三日月を作った。

「えぇ、もう少し先まで見たいほどに。」

「はちを困らせるのは、現実世界だけにしたらどう?」

ゆりの指摘にしろは瞳を丸くし、苦笑した。
そして、
ゆりちゃんには何でもばれてしまうのですね、と続けた。

「あと少しで、とどめが刺せたのですがね。」

「詰めが甘いのよ、あなたも、はちも。」

「そうかもしれませんね。」

両者は視線を交差させた。
そして、秘密を共有する悪友同士のように、にこりと笑った。

その頃の”はち”はと言うと…

彼は未だ夢の中にいた。

そう。

燦々と照りつける太陽。
つきぬける青い空に浮かぶ、まるで絵に描いたかのような、巨大な入道雲。
延々と続く白い砂浜に、穏やかな波が寄せては返す…

こんな冒頭から続く、『夢の中』に。

【完】

お題に挑戦したのは初めてなのですが、こんな感じでいいんですかね…?
5行ぐらいにしたかったのに、長々した結果がこれだよ!
少しでも楽しんでいただけたら幸いですv


こんな下で申し訳ありません(汗)
追記からお返事です⇒朧さん、夢さん
パチパチだけの方もありがとうございます!


はちの月がんばります!ってことで、ランキングですv
気が向いたら、おしてやってください。



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朧さん

なんと自主規制!w
ものすごく内容が気になりますwww
はち愛されてるな~作者冥利に尽きますv
私が嬉しくなるのは、なんでなんでしょうか?w

短編頑張ります!少しでもカッコいい?はちが描ければいいなぁ(願望)

コメントありがとうございました!

夢さん

なんと、先読みされてましたか!>8月
私は先ほど思いついたというのに…さすがですv

え!描いてくださるんですか!ありがとうございまs(ry
嘘ですよねぇwでもでも、お気持ちだけですごく嬉しいですv

短編以外、イラストとか挙げられればいいなぁと思ってますb
応援しかと受け取りました!

風鈴いいですね♪あの音を聞くだけで、不思議と涼しい気分になります。
明日くらいに、買ってこようと思いますb

それまでは仕方なく←
扇風機さんと、仲良くします(´・ω・`)
部屋の中で唯一の、味方なのでb

コメントありがとうございました!

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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