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『もしも飛べたら』

【はちの月企画】

お題② 『もしも飛べたら』

今をときめく時代の寵児達が
様々な質問からその真性を迫られる、という体で、バラエティ番組の1コーナーは進んでいく。

華やかだと言われる芸能界の一部が、小さな箱から覗いており、
地方のしがない古書店である黒蝶堂の夕飯時をも賑やかにしていた。

「もしも飛べたら、いつでも好きな人と一緒にいたいですね。」

「なるほど~。で、例の人との噂は本当なんですか?」

「えぇ~、ここでその話を振ってくるとは思いませんでしたよ。」


一般人が言えば歯の浮くようなセリフも、司会者の下世話な質問も、苦笑交じりの返答も、
続いて届く、明らかに後付けの歓声も。

そのどれもがどこか現実味の無い、作りもののようだ。
と、はちは茶碗を片手に、冷静な視線で分析していた。

「空を飛ぶ時に必要な物ってなんでしょう?」

その時。突然の謎かけが、向かいの席から飛んできた。

「そりゃあお前。ホウキに決まってんだろうが。」

はちは野菜炒めに箸を伸ばす。
その脳内には、ホウキに乗って空を飛ぶ魔法使いの姿が浮かんでいる。

だが、向かいの席の青年は眉をひそめ、

「残念、不正解です。正解は、マントですよ。」

青年・しろは漬物に触れた箸を置く。
その脳内には、正義の味方を名乗り女性を救う、たくましい男の姿が浮かんでいた。

「ねぇ、ゆりちゃんはどう思います?」

静かに黙々と箸を動かし、食物を胃に収めていた少女にしろは問う。

少女は、お世辞にもセンスがいいとは言えない兎のデザインが施されたハンカチで口元を拭うと、

「空を飛ぶのは”自転車”だと、この間読んだ本に書いてあったわ。」

至極当然の事実を述べるがごとく、言い淀まずに言い切った。

「!」

ぱぁぁ!と効果音がつきそうなほどの、しろの眩しい笑顔。
そして、

「まったくの盲点でした!」

続けて弾き出された、明るすぎる声音。

この時、はちの背筋を嫌な予感が駆け抜けたのは、言うまでも無い。



「さぁ、特訓です!」


停車され、僅かに浮いた車体。
急な下り坂の、ちょうどてっぺんで、
カラカラと”空転”するタイヤ。

向かいの弁当屋から借りたママチャリの後部座席には、しろが運転手に背を預けている。

その運転手・はちは汗だくになっていた。
ペダルを踏みこむ足の感覚が、遠くなっていく。

「どうしてこうなった…?」

つい数分前までは、質素ながらも穏やかな夕飯時を満喫していたはずだ。

であるにもかかわらず、なぜこんな非生産的行動を取らされているのだろうか。

「だって、『もしも飛べたら』どうするんですか!ゆりちゃんが言うんだから、間違いないですよ。」

「あいつは多分、昔の映画のパンフレットでも読んだだけだろ!」

「ほら、月まで行きましょう!」

夜空に白く輝く月とは反対方向を、しろは指差す。

「少しは”空気”を読め!」

「はち、知ってますか?宇宙には”空気”がないんですよ?」

「だからといって、空気を読む必要がねぇわけじゃねぇよ!
第一、飛べたら?なんて発想自体がおかしいんだ!
まさに”空回り”した、非現実的な考えだろうが!」


「”空”を駆け”回れる”なら、願ったり叶ったりですね!」

しろはそう言うと体を翻し、自らの首元にマントを着け始めた。
不穏の予感を感じ取ったはちが振り返る。

すると、ちょうどゆりが、自転車の停車バーのロックを外そうとしていたところであった。

はちと視線を交錯させたゆりが、にこりと笑う。

「逝ってらっしゃい、道中気をつけて頂戴。」

「不吉な変換をするな!」

文字の見える目を持つはちは、自然と語気が強くなる。

「あら、うっかり。”上の空”だったわ。」

「わざとだろ…。」

はちは小声で呟く。

急勾配な下り坂を前に、バーのロックは命綱とも言える。
もし外されれば、足元に広がる夜の闇に飲み込まれてしまうからだ。

だからこそ、ゆりを刺激することは避けたい。

そう願っていた。

だが。

「”空”を越えて、昇天しない様にして頂戴。

私よりも先に、伊織さんが迎えに行くことになるかもしれないわ。」


ゆりはどこか楽しげな笑顔のまま、手持ちの傘でロックを外した。

青ざめていく心象。

そうそう、と後方から含み笑いが聞こえた。

「はち、このママチャリはですね、ブレーキが壊れているそうですよ。
気をつけてくださいね。」


しろの最期もとい、最後のカミングアウトを聞きながら、はちは言葉を失った。

青いマントが、バタバタと音を立て、あっという間に暗闇に飲み込まれていく。

東の空に月が浮かぶ。

その高みを目指し、彼らは暴走列車ならぬ暴走自転車として、夜の街を切り裂いて行った。

そう。

『もしも飛べたら』どうなるか。

彼らは、身をもって証明しようとしたのであった。

【完】

第二弾!
自転車で空を飛べるのは、カゴに宇宙人を乗せた人だけです。


追記からお返事です⇒夢さん
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夢さん

コメントありがとうございます~♪
始まりましたね。ついにv

『夢の中』の主体、夢を見た人物は誰だったのか?
ちょっとでも楽しんでいただけたら幸いですv

そして…
イラスト描いてくださるんですか!?ありがとうございます(*´∀`*)
夢さんのイラストはほんわかして大好きなのですv
喜び勇んで、伺わせていただきますv

がんばります!テンションあがってきました!

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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