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『魔法少女』

【はちの月企画 一日一短編】

お題③ 『魔法少女』



ゆり読書中


黒蝶堂の憑者・ゆりは、得体の知れない存在である、と、はちは思っていた。

普段は堂内の棚の上に座り、分厚い本を読みあさっている。
ちょこんと座るその姿は、まるで人形のようだ。

かと思うと、ふらりと外出し、暫く帰ってこない事もある。

まぁ、少女の読んでいる本も、外出先も、
自分と大した関係があるわけではないので、余計な口出しはしない。

少女は仕事に関し、皮肉と言う名のアドバイスをくれる時があるが、
それも必要最低限で。

皮肉屋少女との会話は神経を使い、正直憑かれる
…違う、疲れるのだ。
というのも、口を滑らせご機嫌を損ねれば、どこからか飛んでくる本の大群に襲われるからだ。

だから自然と、口数は少なくなる。
はち自身も、生来”お喋り”な人間ではないから、なおさらだ。

黒蝶堂という、同じ空間を共有しながらも、それぞれが個人の時間を消費している。
過不足も不満も無い。
だが、どこか奇妙な関係が続いていた。

そんなある日の事。

一息つこうと日誌をつけていたペンを置き、堂長席で背伸びをした時の事だ。
棚の上に座っていたゆりも丁度同じタイミングで、本を閉じた。
表紙を撫でるその手つきは優しい。
と、左手に本を移し、右手人差し指を宙に舞わせた。

その時。

ゆりの手から離れた本は、ページを中間で分けて翼とし、二つ隣の棚へと飛んで、
自らが収まるべきスペースへ吸い込まれていった。
そして、向かいの棚から別の本が飛び、再びゆりの手元に収まった。

「なに?」

自らには抑揚の無い声が飛んできた。

「いや、信じられねぇなと思って。」

「ちょこれーと一枚。」

「はい?」

「いいから、早くして頂戴。」

眉根が自然と寄る感覚を覚えながらも、逆らわないのが吉だろう。

奥間の冷蔵庫へ足を運び、そこから一枚、板チョコを取り出した。
しろが買い置きしているものだ。

「ほらよ。」

「ありがと。」

棚から降り、チョコレートを受け取ったゆりは、心なしか嬉しそうに見える。

それを懐に収めると、堂長席の前で右手を振った。
すると、最も端の棚がガタガタと音を立て、続けて、
目にもとまらぬ速さで、一冊の本が飛んできた。

「うわっ!」

思わず目をつぶってしまったのは、
経験上”身に着かされた”、生きる術だ。

だが、衝突する感覚は無い。
おそるおそる目をあけると。

本を手にしたゆりが、それをこちらへ差し出していた。

「え?」

「あなたに今必要な事が書かれているわ。」

手に取ると、なかなか古い本だとわかる。
表紙の文字がかすれて見え、紙もまばらに黄ばんでいる。

埃を払って目を凝らすと。
そう、その表紙には。

「なになに、”質素倹約ノすゝめ”…って、余計な世話だ!」

だが、ゆりは悪びれる風も無く。

「随分古ぼけたわね。…ちょっと貸して頂戴。」

破れない様にゆっくりとページを開く。
そこは、虫に食われていた。
ゆりが手をかざし、目を赤く染めた。

そして、しばしの間。

手をゆっくりとスライドさせていく。
掌から洩れている、赤みを帯びた光が、ページに覆いかぶさる。

光に目を慣らすと、そこで初めて気がついた。
見る見るうちに穴がふさがっていくではないか。

まるでキツネにつままれたような、魔法をかけられているような気分だ。

光がやんだ時、表紙も含め、本は完全に修復されていた。

「まさか、書物片手に呪文を唱えるだけでわけわからねぇ技が使えたり、
敵を倒したりすることができるんじゃねぇだろうな…?」


半信半疑で問うてみた。
すると。

「漫画の読み過ぎよ。」

「だよな。」

どこかがっかりしたのは、恐らく気のせいだろう。

「いざとなったら、呪文を唱えてる暇なんてないわ。」

「そりゃそうだ。あれはただの読者サービスってやつで…え?」

ゆりははちの返事を待たない。
そのまま言葉と同時に本を開くと、眩しい光が噴出した。

「閃光弾。怯ませるだけだから、人体に害は無いわ。
備えあれば、不可能だって可能になる。魔術師もそうでしょう。
見せようによって魔法にも、手品にも見える。」


「って、てめぇは突拍子もねぇんだよ!」

目が眩んだはちは、眼鏡を外し、涙目をゴシゴシと拭う。

しかし、ゆりがそんな彼を顧みるはずもなく。

「たった一つの摂理を守りさえすればいいの。」

言葉を紡ぎ続ける。

「せ、摂理?」

問われた質問に対し、ゆりは口元で三日月を作った。

「無から有は生まれない。これさえ守れば、誰だって”憧れ”の『魔法少女』になれるわ。
例えば呪文を唱えた後、近くの茂みで急いで着替えれば、他者には瞬時に変身したように
見せかけることが可能。それと同じなの。」


「わかるような、わからねぇような…。」

頭が痛くなってきた。

黒蝶堂の憑者・ゆりは、得体の知れない存在である、と思っていた。
だからこそ、深くかかわりたくは無い、とも思っていた。

これは、訂正の余地がある。

黒蝶堂の憑者・ゆりは、得体の知れない存在である。
が、自然の摂理に従っている、らしい。

目前に広がる不可解な現象も、タネがあるという。

全ての事象には、なにか理由があるはずだ。
生来持つ、理由づけしたがる、頑固とも言えるその性分。

あり得ないものをあり得ないと言い切りたい自分がいる。
と同時に、理由なき事柄が許せない自分がいる。

この性分を満足させるために、ゆりの手から繰り出される摩訶不思議な現象を
見極めたい。

いや、見極めなければならない。
普段は隠している静かな好奇心に、火が付いてしまいそうになる

「くそ、気づくんじゃなかった。面倒事を自分で増やしてどうする…!」

魔法では、無い。

そう思えば思うほど、その原理が気になって仕方がないのだ。


【完】

はちは現象の原理にこだわる人。
しろは現象そのものを楽しむタイプ。

黒蝶堂内は、ゆりの領地みたいなものなので、結構無理が通ってますv


追記からお返事です⇒misia2009さん、ゆささん
拍手だけの方も、ありがとうございます!


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misia2009さん

コメントありがとうございますv
ストッパーって、必要だなぁと『もしも飛べたら』を描きながら思いました。
伊織が何とかしてくれるかは…不明瞭です 笑

当企画は、つっこみ不在で突っ走る可能性が高いです。
お暇な時にでも、どうぞお付き合いください♪


ゆささん

コメントありがとうございます♪

実は最初、はちにデッキブラシと言わせるか迷ったのですが、
(某ジブリ作品っぽく)やはりホウキがいいかなぁとv
言葉遊びは、描いてる途中からなんだか楽しくなってきましてw
読み手の方からすれば、はぁ?って感じかもですが←
掛け言葉を考えるのは、結構おもしろいです!

ソースはお察しの通りの映画ですv
初見の時、某宇宙人が怖くて仕方ありませんでした…
まずは捕獲用の罠を仕掛けなければ…!←

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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