『夕闇に流れる』

復☆活!
なんとかいろいろ乗り越えました。
コメント拍手、ありがとうございました♪

あと、こたつ出しました。なにこれあったかい。

さて、はちの月企画の短編更新です。
今月中には、全部終わらせたい…と思いながら、一話完結をどぞーw


はちの月企画 一日一短編
『夕闇に流れる』


眼下の川を、柵に手を掛けた状態で陸橋より見下ろすのは、
小さな少年であった。
彼の後ろには、仕事帰りのスーツの群れ、買い食いに余念のない
学生の足音、夕飯の買い出しに向かう主婦の姿が入れ替わり立ち替わり流れていく。
彼の目はじっと、川の流れを見つめている。
いや、見つめているというよりは、凝視していると表現した方がしっくりくるだろう。
夕日に照らされた水面が紅の光を反射させ、その色が赤から青、そして夜の闇に吸い込まれるまでの時間帯。
黒いランドセルにつけられた名前札が、風にあおられ小さく揺れる。

「おかえり。遅かったね。」

その背に向かい、初老の男性が話しかける。だが少年は、彼には一瞥もくれず
両の手に力を込め直す。むすっとした目元には、確固とした一種の強い意志が宿っていた。

「また学校で何か言われたのかい?」

皺の刻まれた目元、優しい光が細められる。
少年は答えない。

「なら当ててみようかな。君はこう言いたいんだ。」

着物の袖に手を差し込み、少年の隣に立った男は、にこやかな顔一つ変えず口を開く。

「『全部てめぇのせいだ。オレに親が居ねぇのも、オレがあんな気味の悪い店に住んでるのも』って」

「だ、誰もそんな事言ってねぇよ。」

彼の台詞の終わる前、少々被りながら声を発する少年は慌てて顔を上げ、初めて男を見た。
両者の間に流れる、間の悪い沈黙。
ばつが悪そうに顔をそむける少年は言う。

「…ただ、ちょっと馬鹿にされただけなんだ。だから、あんたが心配する事じゃねぇよ。」

「ほう、なるほど。そう言う君が、こんな時間まで帰ってこないで、私を心配させるのは
矛盾してると思わないかい?」


にこにこと笑う男。少年には彼の台詞が完全に理解できず、「むじゅん?」と首を傾げる。

「ならそんな傷心の君に、いいものを見せてあげよう。」

「え?」

返事も聞かぬまま、彼は歩み始める。
灰色の短髪を掻きあげた彼に腕を引かれると、背負われたランドセルが
久方ぶりの運動に体を軋ませた。

到着するやいなや、

「…寒い。」

少年は文句を垂れる。

「河原だからね。」

彼は笑う。
そして、懐から緑色の物体を取り出した。

「ここに、キュウリを置く!もちろん、お皿の上にね。」

疑いの眼差しを背にひしひしと与えられながら、彼は座り込み、川辺に最も近い土砂の上
に、手持ちのキュウリ、隣にはマヨネーズのチューブを置いた。

「ちょっと待とうかね。彼はキュウリが好きだけど、とっても恥ずかしがり屋だから。」

そう言うと、少年と共に、近くの草むらに身を隠す。
何が何だか分からない少年は、されるがままその場に体を忍ばせた。

一時。
小川の流れる音。その音にうつらうつらと船を漕ぎ始めた少年は、突然の音の波に意識を覚醒させた。

「ほら、来たぞ。」

彼の声にはっとして、音の方角を見れば、そこには一本の腕が水面の「下から」伸びていた。
しかも色は緑色で、指と指の間には水かきの様なものがついている。
少年は目を疑う。この寒空の下、泳ぐ人間が居ると言うのか。

いや、自分の知っている生物とは、どれにも当てはまらない。
動物図鑑にさえ、あんな手の形状の存在はいなかったはずだ。
混乱する頭の中、目が離せないでいると、水の波が一層乱れた。
その下。
赤と青に光る眼の様なものと、少年の目があった。
ヒッと声を上げると、影は再び水面に潜んだ。

男は、ちょっと刺激が強すぎたかな、と笑う。

「ここに一人で来てはいけないよ。神隠しにあってしまうからね。」

「かみ、かくし…?」

少年は何とか言葉を絞りだす。驚きで、声が上擦っていた。
しかし、男は笑うだけで

「わかったかな?」

と答えるだけだ。

「う、うん。」

曖昧な返事に、納得したように頷く男。
そして、少年の頭を皺だらけの手で撫ぜる。

「さて、腹も減った事だ。うちに帰ろうか、はち。」


【終】

きゅうりにはマヨネーズとしょうゆ

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気が向いたら、おしてやってください。



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秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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