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『現し世の世界』

たくさんの拍手、コメントいただき感謝です(●^^●)
それぞれの記事にコメント返信をつけましたので、よろしければご覧くださいませ。


ところで皆さんは、お酒を飲まれるのでしょうか?
私は、たまーに飲みます。付き合い程度。
酔っぱらって赤くなる人をみると、ちょっとだけ羨ましくもあります。
顔に出ない私は立ち上がった時に、ふらりとめまいがしてやっと気づくのです。
あ、身体にアルコールが入っている、と(笑)

限界まで挑戦するのも一興ですが、やっぱり「ほろよい」が一番楽しい気がします。

で、なんの話かと言えば、短編更新です。
一話完結型、よろしければお付き合いください。
その前にこちらを読んでおくと、大体の意味はつかめます⇒水色しずく


【はちの月企画 一日一短編】

『現し世の世界』

氷山しろは、深見ヶ原墓地に向かっていた。
と言っても、はちが死んだわけではない。
理由は単純。牡丹に会うためだ。

作った白菜の漬物は口に合うだろうか。
この間は切らしていた饅頭も、先日のお詫びをこめて持ってきた。

「だから、一緒に食べましょう。」

そんな事を考えていると、陽気な彼女の様が思い出されて、自然と頬が綻ぶのだ。

到着した遥光南西の果て。
深見ヶ原墓地は驚くほど静かで、身が引き締まるほど厳粛な空気が流れている。

黒川家の墓前に花を添え、線香を立てる。
はちの祖父・伊織を生前慕った者からの贈物だろうか、
冷たい墓石の脇には、いつかのようにワンカップ酒が備えられている。

今日は風が強い。
野草が一束、石を支えにして置かれ、風に小さく揺れていた。

手早く掃除をし、合掌を捧げていると

「おぉ、殊勝なことだな。」

コツコツとブーツが地を蹴る音と共に、背後から声を掛けられた。

しろが視線を翻し、斜め下方向にやれば、茶けた髪を二つに括った少女が立っていた。
彼女は手に持っている卒塔婆を背に預け、着物の袖を軽く捲くり上げる。

「牡丹ちゃん!こんにちは。」

「こんにちは、なんだぞ!」

深見ヶ原墓地憑者・牡丹は元気よく、眩しい笑顔で言い放った。


「ここは、静かなところですね。」

手土産を渡すと、牡丹はにかっと笑い、今すぐ食べると言った。
墓場中央にある小さな広場。その中心には、いつかの一本の木がある。

風に揺られ、紅葉しつつある枝葉がサラサラと音を立てる。

「賑やかな墓場というのも、新しくていいかもしれないな。」

饅頭を両手に持ち、無我夢中で頬張る牡丹。
のどに詰まらせかけた彼女へ温かいお茶を差し出すと、喉が上下に動き、
瞬く間に水位は下がっていく。

彼女は水が苦手だが、飲む事はできるのか。
しろの懸念事項は音もなく消え、安堵へと変わった。


しばしの談笑。
この間の詫びを言えば、牡丹は気にするなと笑い飛ばす。

「ゆりの言う通り、蚊は多いのは確かだ。でも、ここでしか存在できない者だっているんだぞ。」

牡丹は言う。

「ほら。」

しろは、彼女が指差す先を目を凝らして見た。
乱立する墓石と卒塔婆の山。その境にできた通路の向こう。

…の、更に向こうの向こうの向こう。

遊具は無い。
その上、狭いスペース。
足場は砂利のこの場所。
空き地が無くなったと言われる現代でも、遊び場としては不適切極まりないこの場。

であるのにもかかわらず、はしゃぐ声が聞こえる。

小学校に入学したばかりか。
それほどの年頃の子どもたちが数人、元気よく遊んでいた。

彼らは二手に分かれ、4対4となり手を繋いでいる。

「はないちもんめ、ですね。」

「あぁ、奴らはあの遊びが好きなんだぞ。」

彼らを見る牡丹の目は、さながら面倒見の良い姉のようなものである。
と、彼女の視線に気づいたのか、彼らの内の数人が、こちらに手を振ってきた。

しろは手を振り返す。
子どもが好きな彼は、一緒に遊びたそうで、今にも駆けだす一歩手前のポーズをとっている。

「牡丹ちゃん、僕らも行きませんか?」

「しろ副長、もう逝きたいのか?」

「もう?今しか行く時は無いですよね?」

疑問符を浮かべるしろの隣、牡丹は一人立ち上がり、彼らの元へ歩く。

彼女は彼らと言葉を交わしている。
彼女の周りに、あっという間に人だかりができた。

彼らが引き留めるのも聞かず、再び戻ってきた牡丹。

「『お兄ちゃんに渡して』なんだそうなんだぞ。」

彼女が差し出したのは、一本の赤いかざぐるま。
一筋の風が、その羽を回す。

「いいんですか!ありがとうございます。」

「あいつらの面倒をみるのも私の仕事だからな。ここは託児所では無いと言うのに…。」

言葉とは裏腹に、彼らを見つめる視線は優しい。
その横顔に、しろは問うた。

「牡丹ちゃん、あの子たちは、どこから遊びに来てるんですか?」

しろの他意の無い質問。
にもかかわらず、牡丹は言葉を失った。

しばしの沈黙。

無音が、両者の間を通り抜けていく。
墓地特有のしっとりとした湿気を含む風が、しろの肌を撫ぜていった。

その風に乗り、呟きともとれる声が牡丹から零れる。

「…しろ副長も、『こちら側』に来るか?」

答えの代わりに返ってきた質問。
牡丹は口元を引き結び、珍しく真面目な顔だ。

その瞳が、わずかばかり光を発し、長い髪飾りがひらひらと靡く。

しろは少しばかり考えた後、かざぐるまへ息を吹きかける。
その回転が止まる頃、いつものように人差し指を突き立てた。

「いえ、僕にはまだこっちの世界でする事がある気がしますので、遠慮しときます。」

笑顔で言い切る彼に、牡丹は面食らう。

そして自らの真剣さを薙ぎ払うように、笑い声を上げた。

「『現し世の世界』と『こちら側』を繋ぐ扉は、すぐそこにあるからな。道案内程度なら、してやってもいいんだぞ。」

彼女は白い歯をのぞかせ、へたくそなウインクをかました。

【終】

しろがメインの話も、新鮮でいいかもしれない。

短編がんばるぞ!ってことで、ランキングですv
気が向いたら、おしてやってください。



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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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