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『群青の海』

こたつを出した途端、こたつで寝てしまいました。
おかげで寒気がします。
いやぁ、こいつは魔物です。
この吸引力は、ダイソンに採用されるべき。

てなわけで、短編更新ですv
一話完結が楽でいいです。よろしければ下からどうぞ。


【はちの月企画 一日一短編】

『群青の海』


「『群青の海』に沈めます。」

「まて、話せばわかる。」

暖かな西日差し込む黒蝶堂。
表通りは家路を急ぐ人間と、夜の街へ繰り出す人間が互いにすれ違い、賑やかな様態を醸し出している。
対照的に、冷やかな空気の店内。

話は、冒頭に戻る。

普段の朗らかな表情はどこへやら。
射るような視線が向かいのはちに対して、ぐさりぐさりと突き刺さる。
彼の碧色の瞳は、ひどく澄んでいて、美しいガラス玉のよう。

…しかし、少しも笑っていない。
感情が見られるのは、口元に、造りものの笑みが浮かぶ箇所のみ。

冷気が彼の体から溢れているかと思うばかりに、黒蝶堂の温度が着々と下がっている。


指の腹に力を入れる。
指の先には、彼のお気に入りである”マイ包丁”が握られていた。

「それとも、ここで刺されますか?」

刃先がギラリと不気味な色を顕にする。

「ま、まて!話せばわかる。」

喉元に刃を突き付けられ、上擦った声をあげるのは、黒川はちだ。

「はち、寒いわ。何とかして頂戴。」

音源は、本棚の上。
分厚い本を抱えるのは、自称黒蝶堂憑者の少女・ゆりだ。
下界で騒ぐ彼らを見下ろし、氷山しろより発せられていると思われる冷気を指摘する。

「な、何とかっつっても…!」

彼女の方へ顔を向けるのも命がけだ。切っ先が皮膚を割いてしまわぬよう、慎重に首を回す。

一方のしろは、微動だにしない。
はちから視線を外す事無く、無言で堂長席の前に立つ。
ただ彼を取り巻く涼やか…否、冷やかすぎる空気の渦が、すべてを物語っていた。

「一体何があったの。」

「そ、それがだな…。」

少女は本を閉じ、はちに疑問を投げかけた。

寒いわ、と寒さなど微塵も感じさせない無感動な声で言い放ちながら、ふわりと地上へ降りてきた。

「はちが僕のアイスを食べたんです。」

「腹が減ってたんだ。仕方ねぇだろ。」

「つまり、勝手に食べたって事じゃないですか!」

「オレは一本しか食ってねぇよ!
それなのに、一日で棒アイス一箱空けるなんざ、正気の沙汰じゃねぇっての!」


刃物を忘却の彼方に、声を荒げるしろに対して眉をひそめるはち。

彼の指差す先には、空にされた冷菓の箱の山が築かれたゴミ箱があった。

「あの家はアイスしか食ってねぇって誤解されるレベルだぞ!」

「そう言って、僕のアイスを取った事実を正当化しようとしても無駄ですよ!」

しろが刃の先端をはちの首に突き付けた途端、格段に室温が下がった。

「あ、あぶねぇから仕舞えって!」

はちは口元を引き攣らせる。くしゃみが出そうだが我慢だ。

くしゃみ→前方への反動→刺傷→鮮血ルートが、目に浮かんでいる。

ゆりは両者の言い分を聞くと、組んでいた腕を解き、はちに立つよう命じた。
はちは言われるがまま席を立つ。
その間、片時も、しろの視線が離される事は無い。

「必要な時に手元にないならば、それは存在しないも同じ。」

諭すかのように、ゆりは落ち着いた声音を発し始めた。
相変わらず、外見にそぐわぬ泰然ぶりだ。

「失ってからだと、遅いの。」

はちは目を瞑り、彼女の声に耳を傾ける。

「…まぁ、な。」

「しろは菓子を所望していて、それはあなたが自分で胃に収めた。」

「事実だ。」

彼女は言葉を切り、少々の間を取る。

そして、冷やかな笑みを浮かべた。

「というわけで、はち。腹を割きなさい。」

「なるほど、一理あるな。丁度いい具合に道具もあるし。」

はちはしろから包丁を受け取り、目の高さまで持ち上げる。
切れ味に問題はなさそうだ。
後は、この服だと都合が悪いから着替えて、
臓物で汚れると掃除が大変だから、何かシートを引いて。
取り出した物を納める容器を準備して…。

と、溶けない様に氷が必要か。

「…って、だまされねぇぞ!第一、もう原形を留めてねぇよ!」

ゆりの三段論法に、思わず納得しかけた彼は、自分の頬をぱしりと叩いた。
自分だけに届くよう、「正気に戻れ」と呟く。

「何を言ってるんですか、はち。」

しろは、にこり…いや、ひやりと笑った。

「世界の冷菓は僕の物ですし、はちの物は僕の物なんです。

はちに残された道は、たったの二つ。『群青の海』に沈むか、ここで腹を括るか。」


「いい医者を紹介するから、案ずる事は無いわ。私としては、後者を選んでほしい所ね。」

まともな思考回路の者がいない空間。

その後響いた一筋の断末魔。

室温が北極と化した堂内で、はちは”文字通り”肝を冷やした。

【終】

こたつでアイスは、人類の叡智。

短編がんばるぞ!ってことで、ランキングですv
気が向いたら、おしてやってください。



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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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