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『夜闇に映る幻』

お久しぶりです。

金曜に短編あげるといいながら、今までの放置っぷりに自分で苦笑しているところです。
…11月が明日で終わるだなんて、信じられない。

そう言えば、先日初めて「時をかける少女」見ました。
また見たいなぁ、と思える作品でしたね。

てなわけで、短編更新♪
今回も、一話完結です。さくさくと読めるので、よろしければどうぞv


先にこちらを読んでくださると、ちょいといいかもしれません。⇒『風の香り』
時系列が、これの後になってます。

【はちの月企画 一日一短編】
『夜闇に映る幻』


『結城家』通夜――

買い出しの帰路、歩道の脇に立てられた看板。
その傍を通り過ぎ、軽自動車が一台通れる程度の狭い砂利道を歩けば、ざりざりざりと小石が擦れる音が2人分生じる。
すでに陽は落ち、等間隔に並ぶ街灯の光はとても弱い。
はちとしろ、並んで帰る2人の前から、足音が聞こえてきた。
音は徐々に大きくなり、はちは道路の縁石側に体を寄せた。

「あ、こんばんは!」

しろが明るい声をあげる。隣を通り抜けようとしていたはちは足を止め、眼鏡を掛け直す。
見覚えのある、小柄な影がそこに在った。

「こんばんはなんだぞ!」

乱暴な言葉遣いに乗った、変声期前の少年の様な声。

袴姿に卒塔婆を背負った二つ結びの少女、深見ヶ原墓地の憑物・牡丹。
しかし、影は二つある。はちは再び目を凝らす。
牡丹と連れだっているのは、初老の男性だった。
はちより頭一つ分低めの背丈。豊かな白髪に黒目がちの瞳が印象的で、実際の年齢よりも若く見えているのかもしれない。
こんばんは、と軽く会釈をされ、はちも慌ててそれに応じる。

「こんな夜にどこへ行かれるんですか?」

しろが問う。牡丹は御勤めなんだぞと、はにかんだ。そして、男性を右手の親指で差し、

「こいつ、先走って墓に来たんだ。まったく、驚いたぞ。」

大げさな手振りで、肩をすくめた。

「いやはや、せっかちな性分なもので。」

「せっかち」という言葉には似合わない穏やかな表情と声音で、彼は目尻のしわを一層深める。

「久方ぶりに顔を合わす者も居るだろうから、焦って来ずともいいんだぞ。」

「こんな時じゃないと、集まんないからなぁ。」

遠くを見通すように目を細めた男性は、はちと目が合い、にこっと笑う。
突然射抜くような目で見られ、はちは戸惑う。
結果、笑ったつもりが、引き攣った笑いになってしまった。

「そうかもしれないな。」

牡丹は胸を張って男に同意し、場を引き継ぐ。
しろと彼女は二言、三言程度の挨拶を交わした後、じゃあまた、と別れた。



「はち、見ましたか?」

別れて数分後。彼女達の姿が見えなくなった頃、しろは口を開いた。

「なにを。」

歩くたび、買物袋が徐々に重たくなってくる。

「彼、靴を履いてませんでした。」

彼、おそらく先程の人物…名前は、何と言ったか。はちは大した興味も持たず、はぁ、と生返事を返す。

「裸足だったのか?」

この砂利道を素足で歩くとは、なかなか分厚い足裏の皮を持ち合わせているようだ、と彼は思う。
だが、しろは極めて神妙な面持ちで。

「いえ、その…。」

目を伏せ、左右にキョロキョロと。言葉を探しているようだ。
そして、足を止めた。

「なんだよ、はっきり言えよ。」

はちが振り返る前、白い彼からぽつりと一言。

「…膝から下が、ありませんでした。」

「あぁ、なるほど。…って、え?」

耳を疑うはち。しろは俯いたまま返事をする。

「だから、膝から下が無かったんですって。」

「…さ、錯覚だろ?」

止まったしろの顔を見る前に、再度はちは前方を向く。
自然と早足になっているが、彼が気付くはずもない。
夜の闇が無数の人の手になり、背後から伸びてくる感覚に追われているからだ。

「ジョウダンも休み休みにしてくれねぇと、俺も突っ込み疲れちまうぜ。お前もぼけ疲れだろ?やだねぇ、幻覚って誰もが見るなんてなぁ。そうそう今晩のメニューがカレーだけに、オレ達おつかれー…なんてな!やっぱ…」

それを振り払うかのように、呪詛の様に言葉が次々と零れていく。
が、最後まで言い切る事が出来なかった。

背後の気配が消えたからだ。



おい!
はちは、ぱっと目を向ける。
広がるは、月光に照らされた砂利の一本道。

しろの姿が、ない。

腕に鳥肌。
心臓がキンキンに冷やされた塩水に浸けられたような気さえする。


彼は、気がつかなかった。


焦りを隠せない自分の背中に、白い手が伸びている事に。

そして。

ピタリ。
布越しに届く異様な低温が、はちの首筋に触れた。

「うわぁぁぁあ!!!」

手に提げた買い物袋が地に落下し、食材がぐしゃりと音を立てる。
夜に相応しくない、なんとも近所迷惑な叫び声が辺りに散らばった。



「大丈夫ですか?」

手の正体は、しろであった。
変温動物であるしろは、外気で体を冷やしてしまったようだ。
内蔵が口からでかかり、言葉を失っているはちへ、

「はちこそ、地に足付けてくださいね。」

朗らかな注意が飛ぶ。
はちは、我に返った。霞む視界を、頬を叩く事で正常にする。

「一応聞くが、オレの足は二本あるか。」

まるで『夜闇に映る幻』を突きつけられたはちは、息も絶え絶えしろに問うた。

しろは笑って答える。

「なら、幽鬼さんにでも聞いてみますか?」

「幽鬼じゃねぇ!結城さんだ!」

文字が見える目を持つはちは、過呼吸になりながらも、すかさず突っ込みを入れた。


【終】

月光に中てられると、気が狂うと聞きましたがほんとうでしょうか。

短編がんばるぞ!ってことで、ランキングですv
気が向いたら、おしてやってください。



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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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