【雨風ゆらぎ】

今日は冬至らしいですね!
蒸したかぼちゃが食べたいです。
なのに季節外れの短編置いておきます。
しかも、続き物です。


【はちの月企画 一日一短編】

【雨風ゆらぎ】


夏物処分のバーゲンが各デパートで行われる夏の終わり、今年幾度目かの台風が、遥光の街を直撃した。
そして黒蝶堂堂内では、バケツと雑巾を抱えた人間が右往左往している。

「こっちも漏れてんぞ!」

叫ぶのは、当古書店の堂長・黒川はちだ。
彼は仕事を中断、席を外し、店内を見回っている。
あちらこちらに小さな水たまりができている。
頭上から落ちてくる雫。
確かこの店は二階建てのはずで、ここは一階部分だが…と彼は唸るが、雨漏りしているのは事実。
しろに声をかければ、彼は素早い動きで地にバケツを設置した。

「まったく、これだからこのボロ屋は…。」

はちはバケツを持ち上げ、濡れた床を雑巾で拭う。

朝方から空はどんよりと曇り、表通りには、大粒の雨と風が降り注いでいる。
しろに問えば、ゆりは昨日出かけたきり、戻っていないと言う。
猫の手も借りたい、この状況。

「雨酷いですね。ゆりちゃん、大丈夫でしょうか。」

「この雨の中をか。」

雨森の水滴が額に当たって目覚めたはちは、苦々しいと言わんばかりの顔で言い放つ。
その目元には隈が浮かんでいる。

「はちだって大切な用事があれば、雨やら槍が降っても行くでしょう?」

「槍なら絶対出掛けねぇよ。」

「なら、空からヤリイカだとしたら?明日は朝から曇り空、ところにより一時激しいヤリイカが降るでしょう。」

突如始まった天気予報士ごっこにはちは動きを止め、腕を組む。

「…あんなベタベタした粘着物質が降るなんざ、想像したくもねぇな。」

「夕飯には、イカ料理が並びますよ!」

「地上に落ちた時点で四散するだろ。」

「地面に当たる前にキャッチすればいいと思いますよ。」

いつの間にか、しろは右手に紺色のグローブを嵌めている。

「巧くいけば、余りを売れるかもしれませんし。」

キラキラ瞳を輝かせるしろ。彼を前に、そう言えばこいつ、両ききだったな。
妙な所で、器用な奴だ。
再認識したはちは切り返す。

「でもよ、たかがイカとはいえ、落下速度は凄まじいだろうな。お前の大切なグローブに穴が開くかもな。」

「え!」

しろはグローブを抱きかかえ、はちは台詞を続ける。

「単に水が固まっただけの物質が、車のフロントガラスを割るだろ。要はイカの質量と高度。
それに速度と量次第だな。墨も飛び散って後の片付けも大変だろうし、場合によっちゃ、台風より性質が悪いぜ。」


「なら、降りイカで一儲け大作戦は…?」

しろは恐る恐る問う。テストの点数を、解答用紙の隙間から覗こうとする小学生のように。
はちは断定する。

「オレ達素人の出る幕はねぇ。漁師さんの圧勝ってとこだ。」

弾き出された結論に、しろはガックリと肩を落とす。
ざぁざぁと雨足強くなる表通り。床下浸水が生じそうな量と勢いに、床が飛び跳ねるイカでひしめく様を連想し、
はちは顔をしかめた。

するとしろは、無言で奥間へ赴いた。
作業を再開するのかと、はちが思った矢先、しろが戻ってきた。
はちは、目を疑った。

彼はどこから持ってきたのか、バケツと釣り竿を右手に握り、青いクーラーボックスを肩から下げていた。
鼠色の長靴を履き、丈の長い水色の雨ガッパを着ている。
本人は、至って真面目なようで。

「イカ漁の極意を習ってきます!そして、いつかは空を釣るんです!」

自信満々でそう言い放つと、雨風揺らぐ外の世界へ飛び出して行った。

「イカに流されても、あいつなら帰ってくるだろうな…。」

やれやれと額を掻くはちの頭上に、冷たい水滴が襲った。

【続】

まだまだ続くでゲソ!
イカ娘は見たこと無いですのでゲソ。
…使い方絶対間違ってる。流行語おめでとうです。


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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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