白骨取扱専門店黒蝶堂 1

【白骨取扱専門店黒蝶堂】

燦々と輝く太陽に桜の花びらがきらめく、春真っ盛りの季節。
黒いヘルメットに映る景色は、次々と姿を変えていく。

大通りのど真ん中を、一台の原動機付自転車が颯爽と駆け抜けていった。

前方の信号が赤から青へ。
身体に伝わる僅かな振動と共に、エンジンがうなり声を上げる。
上体を傾け、閑静な住宅街の道路へと侵入すれば、一軒家の立ち並ぶ家並みが視界いっぱいに広がった。
速度を落とし、この時期が持つ独特のまどろみを楽しむかの如く、ゆったりと進む。

と、遠くで白い物体が左右に揺れている事に彼は気がついた。

乱視の混ざる目を凝らし、レンズを通して細めた瞳が焦点を合わせる。
淡い黄色のエプロンを身にまとい、髪を一つに結えている女性が手を振っていた。
年代は30代半ば。
おそらくは、この辺りに住む主婦であろう。

減速を重ねると、背中で風にあおられていた上背ほどの長さがある旗が、自身の反復回数を減らす。
旗が止まる頃合いには丁度、彼女の前に到達していた。

彼女が「ご苦労様です」と頭を下げる。

彼もお辞儀を返す。
そして、眼鏡が外れないよう慎重にヘルメットを両手で支えながら外した。

「こんにちは、お待たせしました。」

愛想良く答え、恭しく礼を返す。
ヘルメットを脇に抱え、彼女に向き直った彼。

――黒川はちは爽やかな笑顔を浮かべ、まるで自慢するかのごとく、自前の白い歯をのぞかせた。

バイクの後部に刺さる旗には「白骨取扱専門店黒蝶堂」の文字。
彼女はそれを見やり笑みを浮かべると、期待を込めた瞳で、はちをじっと見つめた。

【続】

続き⇒ 白骨取扱専門店黒蝶堂②
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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