白骨取扱専門店黒蝶堂 4


そして訪れた昼下がり。
しろはクワを片手に庭先をうろうろうろうろと、まるで宝のありかを探す犬のように、柔らかな土の上を執拗なほど踏みしめていく。

そんな白い彼を、はちは縁側に座り、ぼんやり眺めている。

彼を止めても無駄だという事は、今までの経験上、嫌というほど思い知らされていた。
だから条件を加えてやったのだ。

「建物の中はやめろ。…遊ぶなら外で遊べ。」

はちの目前の庭。
そこには、彼が丹精込めて作り上げている家庭菜園が広がっている。
ここ最近は、ツタを縦横無尽に広げのびのびと育っているイチゴが収穫の真っ盛りで。
獲れども採れども、次の日には複数個できているのだから面白い。

だからこそ、はちは縁側にいるのだ。
しろのクワによって庭が荒らされないかを、じっと観察…もとい、監視するために。

――これは、はちの懸念が的中する、数分前の出来事である。



はちがうつらうつらと忍び寄る睡魔に意識を奪われそうになっていた頃合いに、しろは青みがかった瞳を輝かせた。

「ここですね!」

――何を根拠に言ってるんだ。

しろへのつっこみで、はちは覚醒の扉を開く。

――地図上、ばつがつけられた地点は周りの山や適当な建物配置から察するに、黒蝶堂の周囲10キロは余裕で覆っちまうでかさだぞ。
であるのにその地図を信じて、さっきはオレの椅子を急襲しやがったじゃねぇか。
まったく、適当な思いつきに振り回されるオレの気持ちにもなってみろってんだ。

彼の心象など露知らず。
しろはそう言うやいなや、地図を強引な手つきでポケットに捻じ込み、クワを振りかぶった。

中庭のほぼ中央付近。
あっという間にざくざくと掘り進められ出来上がった穴が出来、同時に、掘り返された土で生成された小さな山が脇に隆起した。

それでも、しろは手を休めない。
一方、はちは呪詛のようにツッコミを呟きながら、半開きの目で、彼を見やっている。

山が一つから二つ、二つから三つ…しろの姿が穴にすっぽりと埋まってしまう程まで掘ったところで、
そろそろ飽きただろう。
「ぼちぼちお茶でものみてぇな」と言えば、「ならばいいお菓子をもらってるんですよ!」としろの気が逸れるはずだ。

きっと、作業の手を止める口実となるだろう。

そう思い、はちが立ち上がった瞬間。

深く青い液体が、地中から噴き出した。
それは瞬く間に穴から零れ出、平坦な中庭一帯がお茶を零したフローリングの床のように、一様に水び出しとなった。

しろは穴から這い出し、満面の笑みと共に空を指差し、ガッツポーズをかます。
はちはわなわなと震える手をぎゅっと握りしめ、

「お前はなんてものを掘り当ててくれちゃってるんだ!オレの菜園が、台無しじゃねぇか!」

ただ一人、青い空に向かって咆哮した。

【続】

続き⇒白骨取扱専門店黒蝶堂 5
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

メニュー
twitter
    更新情報配信中