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【小話】河童の腕の返却は、ぜひとも期限をお守りください (※延長不可)【更新】

かこちやん

↑今回の主役↑

自分の「小説」を「小話」と呼び始めたのはいつからだろう。
「小説」と言うほど、きちんとした体裁でも、しっかりしたものでもなく。「小話」の集合体が、もしかしたら「小説」になるのかなと。なればいいなと。なってほしいなと。ならせてやるよこのやろうと。
人知れず、涼しく野心を燃やしています。

ライトノベルの作者さんたちも「小説家」かと問われれば、ちょっと疑問を感じます。私のイメージと照らし合わせての感慨で、個人的な語感の問題です。大した意味はありません。

てなわけで、「小話」更新です。
主役のカコの説明記事はこちらで⇒カコ概要
一話完結です。さらりとどうぞ。

【河童の腕の返却は、ぜひとも期限をお守りください (※延長不可)】

金、茶、黒の物体が、うごうごと蠢いている。
不審に思い、その様子を赤と青のゴーグルを通して観察する、偵察中の少年が一者。

――また人間の子供か。

ゴーグルの少年・カコの視線の先、子供の持つそれぞれの髪色が反射し、水面に三色の影となって映っている。

カコはうんざりする。

――何の用事か知らないが、さっさとどこかへ去ね。

そう命じてやりたいが、伝える勇気すらない。

と、
茶髪は、背負っていたナップサックを河原の石の上に下ろした。緑とオレンジ色が入り交じるスナックの菓子袋を取り出し、封を切る。すると、他の子供たちは「おっしゃあ!」と、謎の雄叫びを上げながら、わっと群がった。
次に隣の黒髪が、カラフルなジュースの空き缶を砂利の上に広げた。3人はおのおの好みの物を取り、「かんぱーい!」などと騒いでいる。

――あぁ、なるほど。

カコは得心がいった。
今は秋口とは言え、未だ日中は暑い。
そんな気候であるから、水辺は大層に涼しく、過ごしやすい場所であろう。

――行楽の秋とも言うらしいしな。

それに、どうやらここには自分の探す”彼”は居ないようだ。
カコは、そろそろと姿を消そうとしていた。

そのとき。
中央に座る金髪が、飲み干したのであろう赤い缶を、空へと放った。それは綺麗な放物線を描き、まもなく、地へ引き寄せられるように落下した。
ぽちゃりと、流水が跳ね上がり、3人は、「ないっしゅー!」声を揃え、けらけらけらと笑った。
ゴミと化した容器は流されるがままに、下流にいるカコの傍を通りすぎようとした。

水中のカコは全身の血液が沸騰するような、かつ、底なしの穴に体が急落下していくかのような、得も言えぬ感情の波に呑まれた。

彼の体は、水と、その他諸々を組み合わせて出来上ている。川の憑者である彼にとって、水は命そのものであるからだ。強引ながら人間で例えるとするならば、
注射器をぶっさされ、血管に直接、アルコールを注入されるようなものだ。

だが、
単純に、怒りを爆発させることが出来ない。

というのも、

――人間に関わりたくない。

――できれば、距離を置きたい。

そう思う気持ちがあるのも、また然りであるからだ。

その頃、金髪の投げた2つ目の空き缶が、空を飛んでいた。しかし、葛藤ひしめくカコの脳内では、その事実を認識することさえ叶わない。

次の瞬間、
プルタブが入り込み、からりと音を立てながら宙を舞うそれは、見事、カコの頭に直撃した。

気づけば彼は、

「くそガキども!いい度胸だな!」

陸地に登っていた。

ひりひりする頭頂部をさすり、ゴーグルをかけることで

「これは人間じゃない人間じゃない。そう、かぼちゃだ!」

と、自分に思い聞かせながらも、威勢良く喧嘩を売っている、なんとも倒錯的な現状に戸惑うが、もはや後には引けない。
相手は子供で、自分は何倍も永く生きている憑者なのだから、ちょちょいのちょいのはずだ。

両の手に掴んだ二つの缶を、躊躇い無くぎりりと握りつぶす。
怯んで恐怖のあまり、「もうしません」と反省の意を述べるか、それはなくとも突然の川からの襲来者に驚き、逃走してくれるだろうとの算段だ。

だが、

子供の目線と推測した位置に存したるは、少年の鎖骨であった。三者三様、背丈にばらつきはあるが、いずれもカコを見下ろす高さを有している。
その中でも格段にやんちゃそうな中央の少年は、襟足の長い金髪を風になびかせながら、カコを睨み下ろした。遠目では把握できなかった、幼くも厳めしい顔立ちが、カコの目を制圧せんとばかりに歪んでいる。

「お前、ドコ校だよ?」

「さ、最近の子供さんは発育がよろしくてなによりですね。」

最初の勢いはどこへやら。
カコは今すぐ、川に戻りたい気分である。



水の流れが細まり、粘土質が剥き出しになった地上に、カコは拾った木の枝でがりがりと円を書く。
身構え、合図と共に勢いをつけて相手にぶつかり、円の外へ押し出す、至極簡単なゲームを仕掛けようとしている。
三人衆は皆、突然現れた妙なゴーグルをかけたカコを訝しげな視線で観察している。

しかし、

「お前ら、もしかして怖いのか?」

お決まりの軽い挑発に、
3人は円の中心へ意気揚々と乗り込んできた。

1戦目の行事の役割は、茶髪が担った。
カコと黒髪が向かい合う。茶髪が葉の付いた枝を降り下ろすと同時に、黒髪が地を蹴る。
カコは右へひらりと身を翻す。目的物を失い、無防備となった背中をぽんと押せば、子供は円の外へはじきだされる。
今度は茶髪。左へくるり。黒髪の敗因を間近で見ていたにも関わらず、まるで時差のある鏡合わせの事象のように、あっけなく円の外へ転がっていった。
左右対称に泥だらけになった二人が、目を丸くし、カコを見つめた。

カコは一種の爽快感を得ていた。

――なんと手応えのないことか!

最後に、岩場に座っていた金髪が悠々と立ち上がる。
茶髪と黒髪が、円を囲む。彼らが何か名前を呼んだが、カコには届かない。興味もない。この川で命を落とせば、話は別だが、それはそれで面倒だ。

――適当にお灸を据えてやればいい。

にひひと、ほくそ笑んでいた彼に、足払いが炸裂した。飛び上がって避ければ、顔面めがけて鋭い拳が繰り出される。今度はしゃがみ込んでかわす。なかなかの体さばきだ。

ゴーグル越しに見る彼の体はでかいが、敏捷性も高いようで、カコはひゅうと息を吐く。

――こりゃ、将来はろくでもないね。

そんなことを考えていると、肩を掴まれた。
3人の中で唯一、カコの動きを捉えたのだ。

・・・と感じたのは、子供たちだけであった。
気付けば、彼は川に投げ飛ばされていた。ぽちゃりと波を立てる様は、先ほどの空き缶と大差ないなと、カコは笑む。

――なんと愉快なことだろう!

胸のすく思いを得、円の中心で堂々と腕を組むカコとは対照的に、残された子供らは余裕なく騒ぐ。

「こいつ、なんなんだよ!」

「ぜんぜんあたんねぇよ!」

カコにしてみれば、その仕掛けは至極単純なものである。

つまり、掴まれる寸前、体を”溶かした”のだ。
人間は、水を掴むことは出来ず、だらだらと溢れさせてしまうから、その性質を応用した。
ただそれだけの、造作もないことだ。

――説明してやろうか?

得意げになったカコの前で、

黒髪の子供が茶化したように言い放つ。

「もしかして、化け物なんじゃねぇの!?」

その揶揄表現に、
突如、カコの脳内に、赤いリボンの少女が浮かんだ。
想像内の、その少女。
三日月のような口が開き、冷たい笑みを向けてくる。

「この・・・れ「零落童子と呼ぶな!!」

少女・・・黒蝶堂の憑者であるゆりを脳内から追い出すために、頭を抱え、叫んだ。
子供たちはびくりと肩を震わせ、瞬間的に狂乱したかのようなカコを見る。

同時に、
カコの背後で、鋭い閃光と、小さな破裂音が弾けた。

かと思うと、なにかがが吹き飛び、川にポチャリと落ちた。

カコは、左わき腹がやけに涼しくなったなと、右手で確認する。と、触れるはずの物が掌に収まらない。

…見れば、左腕が肘の先より無くなっていた。



「避けんなっ!」

カコは振り返る。
視線の先、音の根本には、紫煙くゆらせる一人の男が立っていた。
赤茶けた襟足の覗く黄色の帽子に、黒い手袋をはめた通常の制服で、色素の薄い瞳が、カコを射ぬく。

両者の中間地点で、金髪が川から這い上がってきた。
どうやら水を大量に飲んでしまったらしく、吐く息は荒い。小脇に浮き袋代わりの丸太を抱えている。

・・・と思いきや。

川に溺れ、藁をもすがる気持ちで掴んでいたそれは、水掻きの付いた五本指のある人の腕のようなもので。
それは、つまりはカコの左腕であった。
呆然とする彼は、腕を放すこともなく、妙な服をまとった彼と、ゴーグルの少年を交互に見比べるばかりである。

一方、割り込んできた男は

「誰が餓鬼と遊べと命じたかっ!?」

革靴の底を鳴らしながら、脇目も振らず、足場の悪い河原を進んでくる。
コメカミの青筋が、絵に描いたように美しい。

「き・・・鬼桐隊長。」

肘より下を失ったことでバランスを崩したカコは、その場に転倒し、視線を彼に据えたまま、わなわなと震える。失った腕の先からは、とめどなく透明の水が流れ落ちていく。

ゴーグルにかちゃりと、何かが突きつけられた。

それは、細身の短銃であった。
構えた男、「キトウ」と呼ばれた男はぐいと顔を寄せ、唾を飛ばさんばかりの勢いで口を動かす。硝煙の臭いが鼻を突く。

「見つけたのかっ!?」

「いえ・・・まだ・・・。」

鋭い目線に、舌打ち一つが突き刺さってくる。
体が竦み、しかし彼から視線が外せぬまま、後ずさりすることもままならないカコは、ただただ、相手の返答を待つばかりである。

カコの恐怖心を知ってか知らずか、
鬼桐は煙草を一つふかし、一度目を閉じる。
そして、勢いよく開き、

「いいから捕まえてこいっ!さもなくば地獄へ」

瞳孔さえ開きそうな目力で叫ぶ。
瞳が黄色く染まり、指は引き金に掛かったままだ。

カコは身震いが止まらず、

「わ、わかりましたって!」

よろけながらも何とか立ち上がり、川へと飛び込んだ。

「な・・・なんだったんだ?」

「あいつあれだ・・・!ヤクザって奴で・・・!」

カコが居なくなった河原の隅に、少年たちは取り残された。眉を八の字に下げ、座り込んでしまっている。
鬼桐が彼らを見た。というよりも、逃げようとする彼らを、その場に張り付けにするかのような鋭い視線で、睨みつけた。少しの間を置き、短銃を右のホルダーに戻せば、余裕のあるその動きとは対照的に、子供たちは今にも泣き出しそうである。

鬼桐は、目を逸らさず言う。

「お前ら」

「「「は、はいっ!?」」」

鬼桐は、半目で泥だらけ水被りの被害をそれぞれ被っている彼ら一人ずつの目を覗き込み、

「自分のヘソがあるか、確認した方がいいぜっ!」

一人の腹を黒い手袋越しの指で押した。

彼らは金縛りが溶けたかのごとく、一斉にTシャツの裾を捲り上げ始めた。俯いて確認するのも、顔を再び上げるタイミングも寸分違わなかった。

彼らの目に映ったのは、だだっ広い、単なる河原であった。まき散らしたスナック菓子の残骸と、握りつぶされた空き缶が二つ、足下に転がっている。

黄色い男は、忽然と姿を消していた。
何かが焦げる臭いだけが、辺りに漂っては、空へと消える。
彼らは、はっと我に返った。
誰にともなく、すべてをリュックへ押し戻し、我先にと土手へ駆け上がった。

川は再び、平穏を取り戻した。



ここからは、後日談である。

三人衆は黒髪少年の家に集まっていた。

彼らは、金髪が川で拾い持ち帰ってしまった腕らしきものを、年長者に見てもらおうと考えたのだ。

穏やかに孫とその友達を見守っていた老人の目は、それに焦点があった途端、鋭いものに変わった。

「間違いない、これは、河童の腕じゃ。今すぐ返してくるんだ。」

「またおじいちゃんが変なこと言ってる!」

年長者の言葉は、若輩者に受け入れられない事もある。
子供たちはひゃあひゃあと騒ぎ、腕を次から次へ、たらい回しにした。

それから三日後。

床の間に飾っていた河童の腕は、忽然と姿を消した。

【完】

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!
鬼桐さんが初登場する話は、これ⇒夏夜の石畳を砕いて渡れ

かなり乱暴者ですが、努力家でもあります。
彼についても、また後日。

コメント、拍手ありがとうございます!
がんばらんば!

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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