【小話】せんたくの話【更新】

【せんたくの話】

「まったく、洗濯物が干せませんよ!」

黒蝶堂一階に顔をのぞかせたしろは、手元のカゴを指差し、ため息をついた。
カゴの中には昨晩洗濯機で揺られ、後は物干し竿に吊られるのを待つだけの衣類の山。

「仕方ねぇだろ。うちには乾燥機なんて高級なもんはねぇんだから。」

堂長席に座るはちは、外の傘の群れを見ていた。色彩豊かな彼らは足早に、白い煙の向こうへ流れていく。
平日の朝、最悪の天候。隙間から侵入してくる、生温かい空気。

季節感が狂う気候だ。

「おい、今は冬だよな。」

「久々の雨で、頭にカビが生えたんですかね?」

洗濯物をハンガーにかけ、部屋干しの準備をしていたしろは手を止めた。
続けて、動物の生命力ってすごいですね、と感嘆する。

「ちげーよ。むしろ、お前の発想力と発展能力に脱帽だ。」

「ありがとうございます。」

しろは笑った。

対照的に頭を抱えたはちは、

「ちょっと気になったから聞いてみただけだ。」と付け足した。

昼過ぎに陽が注ぎ始めた。しろは待ってましたとばかりに階段を駆け上がっていく。
二階を超え、目の前に広がった狭いスペース。
決して立派とは言えないが、しっかりした作りの、黒蝶堂の屋上だ。
手を陽に透かし、体を伸ばした。雲の合間からのぞく、穏やかな光。

「全部、この子たちに下さいね!」

しろは空に向かって呼びかけた。


【了】
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ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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