【小話】コンビニの話【更新】

【コンビニの話】

「賑やかですね。」

大通りを歩くしろは隣のはちに声をかけた。目線の先には眩しすぎる小型の、便利な店。
入口付近では学校帰りの男子学生が集団で屯し、各々アイスやら菓子やらを手にふざけあっている。

アーケード内にコンビニエンスストアが進出してきたのは、ごく最近の事だ。
少なくとも彼らが黒蝶堂を去った三年前には、古着屋が存していた。

「そうだな。便利な世の中になったもんだ。」

大して興味がないらしいはちは、常套句を並べた。そして、両腕に下げた買い物袋を見てげんなりした。
まとめ買いが安いのです!とただでさえ苦しい家計に追い打ちをかけるような主張に押され、あれもこれもと手を伸ばした結果がそこにはあった。

「エンゲル係数100%だな…。」

はちは眉をひそめた。
しろがすかさず反論する。

「ちょっとずつ買うと、無駄が多くなるんですよ。彼らのご両親だって、夕飯を作って待っているでしょうに…。」

高校生の隣を抜けた。

「まあ悪いことだけじゃねぇだろ。」

アーケードを抜けた時、はちは軽い口調で言った。

「どういうことですか?」

「行ったことはねぇが、コンビニは便利なんだろ。」

「僕もないですけど、おそらくそうなんでしょうね。」

「なら、金銭面では損かもしれねぇが、時間を短縮できるってわけだ。」

そうなりますね、と同意したしろに、

「つまり、あいつらは時間を買ったんだよ。」

はちはたたみ掛けた。

しろは首を傾げた後、

「はち、時間は誰にでも平等で、お金じゃ買えないんですよ。」

至極真面目な顔を向けた。
どうやら言葉回しが通じなかったようだ。
歩き疲れていたはちは、つっこみ権を放棄し、

「あいつらにはもっと欲しいもんがあるのさ。」

戸を開けた。ゆりが留守番をしているはずだ。

「今日のはち、ナルシストな詩人みたいで、なんだか気持ち悪いです。」

後ろ背に感じる冷たい視線。煮え切らない思いが、ため息となって外へ出た。


【了】
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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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