【小話】七色行列と二択道【更新】

【七色行列と二択道】

行列ができている。
七番目の客曰く、

「ここは、雑誌で紹介されていた」

六番目の客曰く、

「ここは、テレビで絶賛されていた」

五番目の客曰く、

「ここは、ネットで中傷されていた」

四番目の客曰く、

「こんな趣のあるところが、あったなんてね」

三番目の客曰く、

「この店の店長は、帰国子女らしいよ」

二番目の客曰く、

「確か、とても歴史があるとかなんとか」

一番前の客曰く、

「店長は、君のお母様なのかい?」

一番前の客人を出迎えた者は、

「・・・その店は、街中の、三列奥に入った通りっス。」

生気の宿らない瞳と、ひきつる唇を携えた営業スマイルで吐いた。

――なるほど。どおりで看板が違うと思った。

――なんと、わかりにくいところにあるのね。

――なぜ、もっと早く言ってくれないのか。

――なぜか、勘違いしていたみたいだな。

――なんでかな、地図はここになってるんだけどさ。

――なにはともあれ、ありがとう。

事情はそれぞれ、助言後の反応もまたそれぞれである。
助言する者は不思議に思っている。来るもの来るもの、別の店を目的としているのに、なぜか皆が皆、”この場所”を正解と信じて列に並んでいるのである。こんなことは、今まで無かったというのに、どうしたことなのか。

数分後、すべての客を正しい道に先導した者、つまり

黒蝶堂堂長・黒川はちは堂内に戻り、自らの席に着いた。

「あれだけいて、うちの客は、一人もいねぇって・・・」

頬杖をつき、眉間のしわを指でなぞる。がらんどうの堂内を見て、

「・・・落ち着くな。」

ぽつりと独り言を言うのである。

「案じることはないわ。」

彼の耳に、書物を広げる少女の言葉が届く。

「貴方は堂長。人間と憑者の関係を円滑にする役目よ。」

――本屋が繁盛しなくても、別に構わないわ。

少女・ゆりが真面目くさって言うものだから、

「本屋をがんばるに決まってんだろうが。」

――わけのわからねぇ事象に巻き込まれるのを、本業として認めるわけにはいかねぇ。

強い語気で彼が言うと、

「その調子でいくなら、貴方の未来も明るくなるわ。」

ゆりは快活さのまったくない声音で発し、

「・・・この調子でいかねぇと、暗い未来しかねぇみたいじぇねぇか。」

そんなオレが、なんで人様の道なんざ案内しねぇといけねぇんだと毒づくのであった。


【了】

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ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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