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【小話】橙の知覚【更新】

電光掲示板を見上げるしろが、ふっと声を漏らした。配達の帰路、駅のホームという雑踏の中でも、彼の声ははちの耳へ正確に飛び込む。

「右から左に流れてる文字を見てて思ったんですけど、あれって順々に電飾が光ってるだけですよね?」

「・・・まぁ、そうだな。」

あれを電飾と呼んでいいのかと心中で異議を唱えつつ、はちも釣られて視線を追う。

「僕たちも、同じかもしれませんね。」

「・・・なにがだ。」

しろは朗らかな笑顔ではちを見やり、人差し指を立てる。冷たい風が、彼らの横を吹き抜けていく。

「錯覚ですよ。」

はちは指先を額に添え、眉をひそめる。待ち時間をつぶすには隣人との会話がもってこいだが、いかんせん彼は電波的思考回路の持ち主である。空想力が試されるなと、はちはさして高鳴らない好奇心に引きずられ、思考を深める。

「・・・自分は動いてねぇのに、第三者には動いているように見えるってことか?」

「逆も、です。」

「そんなわけがねぇだろ」と続け、足元を見る。自分の足は、揺れるホームを踏みしめている。周りには入れかわり立ちかわり、人が流れて位置を変えていく。

「地球が毎日ぐるぐるしてるのは知っていますか?」

マスクと制服の子どもが、指を惑わすしろを怪訝そうに睨む。手元で開かれた参考書が、風で煽られる。しろは、その視線をすり抜け、深刻そうに顎に手をやる。

「まだ、気づいていないだけなのかもしれません。」

「お前はもっと気づくべきことがあると思うがな。」

たとえば、乗るはずだった電車が今し方、出発してしまったこととかな。
隣の子どもが参考書を閉じたときに気づくべきだったんだと、はちは深いため息を吐く。再度電光掲示板を見上げると、休まない電飾たちが自分たちを見下ろしていた。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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