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【小話】飴色のこうふく【更新】

「またこれか・・・」

もはや言葉にするのも面倒だと、昼食を前にため息をつく。ずっしりとした質量の、甘ったるい匂いを放つそれが並んだ食卓は、ここ何日続く光景である。

「だって、たくさんもらっちゃったんですから!」

美味しいうえにお腹も満足するなんて、とっても素晴らしいことですよ!と、割った芋の片割れをはちに差し出したしろは、声高に主張した。

「・・・オレたちは、いも責めにあってるんじゃないか?」

それを受け取り、小さい一口を運ぶはちは「・・・いや、オレたちにいもしか食わせねぇことで得する人間がいるとは思えねぇな」と冗談めかした。すると、しろははっと目を見開き、皿に芋を置いてテーブルを叩き立ち上がった。年季の入ったテーブルに、ぴきりとひびが入る。

「ど、どうした?」

ぎらぎらと輝く青い瞳が眼前に迫りくる。ますます疑問符が増えた瞬間、緩めていたネクタイを引っ張り上げられた。首が締まり、口中におさめたばかりの芋が、逆流しそうになる。喉に詰まり、明日の新聞を賑わせるだなんて、ごめんだ。なんとか我慢し、机の上に手を伸ばす。そして、突如狂人と化した隣人の口に、彼の芋を突っ込む。ひるんだ彼の手が離れた瞬間、咳込みながらも、なんとか口内のいもを嚥下した。水で流し込み、落ち着いたところ、視界に入ったのは、反動で倒れ、テーブルに頭をぶつけて失神しているしろの姿であった。テーブルの端が欠け、木材の破片となって転がっている。

「おい!」

近寄り、額を叩く。数秒後、彼は呻いて目をうっすらと開けた。目の色は元に戻り、穏やかな海のような柔らかさを示した。弱々しく動く口元が、細々とした声を紡ぐ。

「はちがこれ以上いも臭くなってしまったら、ますますお客さんが減ってしまいます。」

「いも臭いのは、いもから伝染るわけじゃねぇっての!今に始まったことでもねぇよ!」

はちはひそまる眉をそのままに、皿の上に築かれた飴色の山に目をやって、ため息をついた。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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