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【小話】長尺科白【更新】

「僕たちって、言葉で意志疎通を図ってますよね?」

「・・・一種のコミュニケーションツールって意味だな?」

昼下がりの黒蝶堂にて、黒白の両者は言葉を転がす。

「質問に質問で返すとは」云々と、しろは唇をとがらせる。

「・・・だとしたら、どうなんだ?」

答えないしろに代わって続きを促すはちは、人差し指で自らのこめかみ部分を軽く押さえる。天井を見上げていたしろは、「僕、考えたんですけど」と、止まっていた時計の針がふとした瞬間に音もなく動きだすかのように、機嫌を直し、仕切りも直した。

「今までの人生の中で、沢山使ってる言葉は何ですかね?」

彼の手には、「今世紀最も売れた本ベスト100」という書物がある。そびえる書棚の頭上高くに、一冊分の空間の開いた箇所がある。どうやら、棚の整理をしていたようで、はちはそのタイトルに疑問を呈す。

「・・・どの世紀の話なんだ?」

「はちのは、すぐわかりますよ。」

「・・・え?」

戸惑うはちの前、しろは腕を組み、首を傾げた。眉をひそめて、あらぬ方向に視線をやる。そして、咳払いをすると声音を低く保ち、

「「・・・どういうことだ?」「わけがわかんねぇ。」「・・・頭が痛ぇ。」の三本は鉄板です!」

堂長そっくりに、真似てみせた。

「・・・わけがわか・・・」

思わず漏らすところであった言葉を、はちは、ぎゅっと唇を引き結んで留めた。ばつが悪そうな彼の様子に、屈託無く笑う青年の青い瞳が細まる。彼らは続ける。

「いい言葉で埋め尽くされた人生は、いいことが多かったんじゃないかなって思います。」

「・・・頻度じゃなくて、その内容の方が重要じゃねぇか?それに、割合だってあるだろ。」

「頻度が多いってことは、幸せが沢山訪れてるってことですよ。」

「・・・時と場合に寄っちゃ、嘘を言ってるのかもしれねぇだろ。」

「言葉では伝わらないことも多いですけど、言葉にすることで初めて伝わることもあるんですよ。」

「・・・どういうことだ?途中を省かねぇで、ちゃんと最初から最後まで、説明しやがれってんだ。」

「そこは、くみ取ってもらわなければ!」

「・・・言わせてもらうが、頭が痛ぇよ。」

はちはため息を吐き、堂長席で肘を突いた。何気無くしろから渡された書物の出版年を確認すると、「・・・割と、最近のだな。」と呟き、再度綴じこんだ。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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