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【小話】きみどりの正体【更新】

「変化に適応しなければ、進歩はないわ。」

「・・・んなこと言われても。」

はちは、箸を惑わせる。先日、鹿々苑百貨店の使者が提案してきた総菜の試作品が完成したというので、その蓋を開けてみた。包装紙はなく、プラスチックの箱の側面に「焼き肉」とマジックの走り書きがあるだけだ。

「・・・こんな高級な総菜なんざ、逆に買わねえだろ。」



西日のまぶしいその日の夕方、彼らは鹿々苑百貨店に足を向けた。

「ここには、欲にまみれた人間しか来ないのに。」

柱の陰に隠れた掃除スタッフは、モップの柄を強く握った。すると、掃除用具は姿を変え、シャープなラインの美しいベースとなった。作業着のまま、彼女は弦を鳴らす。

「なのに、おかしい気配がして、見に来たら君たちがいた。」

やっぱり変なんだね、黒蝶堂って。
揺らぐ声は、八の字に眉を下げ、今にも泣きそうな表情から発せられた。

「・・・小綺麗には、めかしてくるだろ。デパートなんだからよ。」

店内の天井より吊された案内板が、水玉模様に汚染され、落下してきた少し前のこと。出立前の事前のゆりの指示通り、三歩下がったはちは事なきを得ていた。欠片の角が頭に当たっていたとしたら・・・考えるだけで、彼は身をすくめる。
少女は言う。

「皆、汚れてる。掃除して跡形もなく消したいくらい。」

「・・・どっちでもいいけどよ、これを返しに来たんだ。」

ため息を吐くはちは、洗浄した空の容器を示してみせる。アンケートと共に、紙袋に入れて持参していた。

「・・・あんなんは買わねえだろ、特に若者なんざ。」

質より量という言葉があるんだよなと、内心で補足を入れた。
すると、背の低い掃除スタッフは、曲のキーを半音上げた。

「だってアレ、本当のお肉じゃないもん。テストだから。」

はちは硬直し、彼女の言葉を反芻する。
追い討ちをかけるのは、決まって隣人だと彼を振り返れば、

「確かに、”牛肉”とは書いてなかったですね。」

今まで食べてきた食材の中にも、同じ物は無かったですねと、しろは顎に人差し指をやった。

「・・・一応聞くが、ちゃんとした食用の肉なんだろうな?」

「ピンからキリって言葉が、百貨店にはあるんだよ。」

少女は震える声音で呟くと、ベースをモップに再変化させ、ちょうど開いたエレベータに乗り込んだ。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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