【小話】ももいろだまり【更新】

「梅や桜も、涙を流すんですかね?」

「・・・植物に、んな機能はねぇよ。」

窓の外を眺める彼の目を、縫い針のような細い雨が通過していく。

「どことなく切ない気持ちになるって言うじゃないですか。」

「・・・そんなのは、見てる奴の勝手な感慨の押しつけだろ?」

涙を流す樹木なんざ、聞いたことねえよと、堂長席で帳簿をめくる。

ほら、百聞は一見にしかずって言いますよねと、しろに腕を引かれ、しぶしぶ立ち上がる。
窓辺に寄れば、そこより見える木々の花びらに、雫が打ち付けては地上に落ちていた。
視線を下に落とすと、根本に雨滴が溜まっているのが確認できた。その違和感に、脳内で納得のいく説明を弾き出す。

「・・・お前が絵の具でも混ぜたんだな。」

手の込んだ悪戯をしやがってと、額を掻くと、

「そんな野暮なことはしませんって。」

雨が上がったら、新しい景色ですねと、しろは笑った。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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