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【小話】水の薬桶【更新】

「立ち上がって目的地へ向かいましょう!」

「だから、無理だって言ってんだろうが!」

堂長席の黒川はちは、首を斜めに歪める。安物の靴を脱ぎ、椅子を引いて足首を腿に引き上げる。左足の甲を靴下越しに右の掌で握り、元の位置に戻そうと力を込める。だが、捻れた親指は他の指の下から離れていこうとしない。手間取っていると、指は太い枝のように堅くなった。指の根から中央部の土踏まずまで続く神経がぴんと張りつめ、再度位置を変えようとすると、今度は激しい痛みを伴った。

悶えていたはちの背後から、白い頭が飛び出したのは、なんらかの理由で発症した症状に悪戦苦闘し始めてどれほど経過した頃だろうか。
白い青年は、「水分不足が原因らしいですよ!」と、人差し指を立て、すぐに彼の腕を掴んだ。

「頭から水をかぶれば、万事解決です!」

台所か洗面所に行きましょうと、進行方向を指さした。

「・・・だから、痛くて立てねぇんだよ。」

両手を使って指を押し戻していたはちは、「持ってきてくれればいいだろうが」と、ふくらはぎまで伝染した痛みをこらえつつ、しろを見やった。
すると、しろはその目をキラリと輝かせ

「はちを運ぶより、水瓶を運べってことですね。」

「はちが攣れば、桶屋が儲かりますね」と、笑った。
序でに、はちの足を指先で突いた。

ますます痛みが増し、涙目になったはちであったが、

「・・・水瓶でも桶でもいいから、治す方法があるならやってみるしかねぇだろ。」

確かどっちも、どっかにあったはずだと、低く呻いた。すでに痛みは、痺れに変化しつつある。一早く苦境から脱し、元の生活に戻りたい。たったそれだけのことが、彼の脳に願望として焼き付いて離れやしなかった。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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