【小話】しろくろえんせん【更新】

「こっち側しか持ってねぇんだよ。」

「それは、ちょうどよかったです!」

黒い彼は、両サイドにプラグが縫いつけられている黒いコードを白い彼に見せた。すると白い彼は、両サイドにコンセントの板が縫いつけられている白いコードを黒い彼に見せた。プラグを手にした白い彼が、自らの板のどちらにもそれを繋ぐ。2本のコードは1個の円となった。円は宙に浮かび、遠くの白地の床の片隅に降りたった。

彼らは作業を続ける。

黙々と円を作り続け、どれくらいの時間が経った頃だろうか。
あるとき、白い彼がコードの山から引っ張り出した物体に、黒い彼は眉をひそめた。
それは、コンセントの形状が縦に・・・でなく、横並びで二重の線の走るタイプであった。黒い彼は、「こんなもんがあったのか」と、眼鏡越しの目を近づけ、しげしげと観察する。手元にあるコードのプラグとは、どれも一致しそうになかった。「・・・困ったな」と頭を悩ませていたところ、白い彼の「できました!」との声に、顔を向けた。彼の手には、形を歪められ、拡張させられたコンセントがあった。既存のプラグにとって高さは必要以上のようだが、幅はちょうどよいようで、なんとか円を形作ることができた。

今度は、プラグに問題があった。
積み重なったコードの山から引き抜いたプラグは、反対側が三つ叉になっていた。「三つには出来ないですよ、ここにある道具では。」と、白い彼が顎に指をかける。プラグの角をへし折るか、コンセントに穴を開けられれば事なきを得るのだが、彼の言うとおり、この空間に相応の道具は存在していなかった。

あれこれと案を出しては却下してを繰り返していると、黒い彼の耳が、遠くからの声を拾った。「うちの犬が見つけてきたんだぞ。こういうのはおまえたちの管轄だろう?」袴姿の赤紫の少女は走ってやってくるや、黒い彼の鼓膜を破らんばかりの声で言った。その手には、三穴のコンセントの束があった。彼らは感謝の意を述べ、より大きな円を作った。

白地の床面が、無数の円で覆われた。最後のスペースを埋めると、彼らはコードの上に寝転がった。疲労感が指先まで詰まり、立つのもままならなかった。黒い彼が瞼を閉じると、今は亡き祖父の微笑む姿があった。

横になっていた彼らが足音に気が付いたのは、それからしばらくしてのことだ。影のような群衆が、こちらの床に足を踏み入れた。皆が黒い服を纏い、表情は見えない。黒い彼は、沈黙の群衆を警戒心に富んだ瞳で睨む。白い彼は、沈黙の群衆を蒼い瞳で眩しそうに細めた。

黒い彼は計算する。

群衆を相手に、持たせればいいのか、持つのを待つか、はたまた強引に手を伸ばすか。少なくとも、このまま放っておいていいはずがない。根拠はないが、おぼろげに思う。夢の中の祖父の顔が、ちらついて離れない。細くても長くても、途切れることのないようなコードが、この空間にはあるはずだ。白い床は、さらに広がった。

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秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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