スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【小話】白みがかった本体【更新】

「…最早、おまけの域を超えてるだろ。」

手元に目を落とす。持ち込まれた古本に、白みがかった薄いケースがくっついていた。中身は、本の内容をミニドラマとして映像化した作品らしく、本の表紙には著者とは別に、監督らしき立ち位置の人間の名が併記されている。”分売不可”とあるから一緒に持ってきたと、挙動不審の客は言っていた。だが、黒蝶堂では、内容を確認することができない。再生を可能とする最先端の機器そのものが無かった。

ーーそれにしても、どういうことだ?

これは本付きのDVDなのか、DVD付きの本なのか、その分類に迷う。裏返し、定価を確認する。すると、これが単なるハードカバーだけだと仮定したときとの違いが一目瞭然であった。

まさに、ケタ違いだ。

「初回特典というやつですね。」

背後から体を乗り出してきたしろが笑い、お得なんですよと、瞳を光らせた。

「…この価格はどうにもならねぇのか?」

「好事家の、気持ちの問題ですからね。」

僕、思うんです。

その前置きに、図らずも身構える。彼は人差し指を立て、続ける。

「二回目特典とか、百回目特典とか作ってもいいと思うんですよね。」

「…キリがねぇだろ。」

マニアか、オタクか、どちらを呼称とすべきかわからないが、彼らは身を削ってまでそれを揃えるのだろう。そして、飽きたらきっかけ次第で手放す。時に、必要な物だけが手に入らない条件なら、セットになっている物を購入し、分別し、不要物をゴミ箱に廃棄する手段に出る。

それほどの価値が、残された方にはある、ということだろう。他人には理解が難しくても、だ。

「いいものと思ったら、迷わず手に入れるべきですよ!」

「…そういう人間がいるから、オレ達の仕事は無くならねぇんだよ。」

前方に立ち並ぶ書棚に詰め込まれ、積み込まれた、かつての主を失った書物と、足元に所狭しと並べられた古びた雑貨類の輪郭が濃くなったような気がした。

「迷わず創り始めるべきですよ!」

「…オレは売買の位置の人間だ。」

既存物品を売って買って消費するだけの一般人だから、作り手の事情なんざ知ったことじゃねぇよと、白紙のノートを押し付けてくるしろを押し戻した。


スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

メニュー
twitter
    更新情報配信中
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。