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【小話】魔性のレジスター【更新】

「新しい才能を探している。」

「・・・才能、っスか?」

相づちを打つと、客人は”吹き抜ける爽やかな風”とのテロップが肩口付近に似合いそうな笑みで

「ここにはないから、君が知る必要はない。」

”カツカツ”と足下に擬音が書き込まれるように、颯爽と出て行った。途中、書棚から一冊の本を取りだし、

「せめて新刊ならましだが、よくもこんなものを売れるな。」

それが才能と言えば才能か。

そんな台詞を堂内にこだまさせ、それをついと放り投げた。



「言い返さないのは、賢明な判断ね。」

「古いもんがいいとは限らないだろ。」

「そんなことを言っていいんですか?」

「なんでだ?」

客が帰り、床の書物を拾い上げて棚に戻したところ、彼らは姿を現した。堂長席の隣にはしろが、棚の上には少女が。特に少女の方の、空間にぱっと現れるとしか表現できない唐突な登場の仕方には、いつまでも慣れそうにない。

嫌みのない笑みを浮かべたしろは、黒蝶堂を見渡し両腕を広げた。

「古いものに囲まれて、生活しているじゃないですか。」

「どの家も、同じだろ?」

「ここは特別多いですよ。」

「新品もレジを通りゃ、中古品だ。」

金で支配欲を満たしているんだろと、思うままを述べ、ため息をついた。
すると、しろの目線が口周りに張り付いてきた。視線がうるさいと、観察していれば、首をひねった彼はゆりに向かい、口の前で手を開いては閉じた。すると「そうね」地上に降りてきたゆりが、短く応じた。

わけがわからねぇ。
露骨に眉をひそめれば、両者は口をそろえ、指をそろえた。

「「饒舌」」」

「・・・だな。」

居心地もばつも悪くなり、口を掌で覆う。
鼻から息を吐いたゆりは、恬淡と述べる。

「黒蝶堂に、少しは矜持を持てたということかしら?」

「・・・そう言うわけでも、ねぇけどよ。」

ふと、思いついた意見を、たまたま思いついた言葉で語ってみる。

「買った瞬間、他人にとっての価値はだだ下がる。物品の本質は変わらないのにな。」

頬杖をついて棚を見渡せば、

「逆も言えるわね。」

ゆりは、くるりと人差し指を宙に舞わせた。空気に丸を描く仕草に、一冊の本が呼応した。飛んできた書物を伸ばした腕で掌に納める。意図が分からず、ぺらぺらとめくれば

「僕の手を少しの間通過しただけで、驚くべきプレミアがつく可能性がありますよ。」

覗きこんでくるしろが笑う。名前でも書いておきましょうかと、たまたま開いた裏表紙にペンを突きだしてきた。そのペン先を掌でとどめ、書面にじっと目を貼り付ける。どうかしたんですかと問うてくるしろも、それを見つけて「先を越されちゃいましたね」と、トーンの落ちた声音とともに、得物の矛をしまった。

「・・・価値なんざ、誰が決めたかわかったもんじゃねぇな。」

しばらく脳内であれこれと検討した後、書物を閉じ、表紙を拭いて、そのタイトルを目でなぞった。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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