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【小話】逓増の罠【更新】

「敵が現れたら、すぐ剣を振るんですよ!」

「・・・通行人が、真っ二つになったんだが。」

隣人が「拾ってきました」と、犬のように鼻を鳴らした数分前、なぜかそれを手渡されて戸惑っている。
両手を添え、中央の画面に映る主人公を、左から右へ歩みを進めるポータブルゲームだ。
右の指がちょうどかかる位置にあるボタンの一方を押すと剣を振るい、もう一方を押すと、小さくジャンプをするという簡単なモーションを繰り出す。

「大丈夫ですよ、二人までは。」

「・・・大丈夫なのかよ、二人は。」

ゲームオーバーにはなりませんと、脇から指示を出してくるしろは楽しそうである。

しばらく的確な指令の元、近寄ってくる敵を倒しつつ、プレイヤーを右の世界へと送り込み続けていた。
すると突然、腐敗した犬のようなフォルムの化け物が画面の半分近くまで侵略してきた。

「それ、ラスボスですよ!」

「・・・おい、まだ序盤だぞ?」

取扱説明書を開いた彼は、珍しい昆虫を捕まえた夏休みの少年の顔になった。攻略法を見つけてくれようとしているのだろうか、とりあえずこれまでどおりボタンを押し、剣を振るう。しかし、堅い鎧をまとっている妖怪には、まったく刃・・・もとい、歯が立たず、画面は暗転、「ゲームオーバー」の淡い光を放つ文字が、暗闇をバックに落ちてきた。

「・・・これ、詰んだだろ。」

取扱説明書に攻略法のヒントはなく、あれやこれやと討議しあい、それを試すため犬のステージに向かっていったが、結局のところ、犬を退治することはできなかった。ゲームオーバーの画面をそのままに、ゲーム機をしろへと戻す。

「・・・こんな最初に最終の敵が出てくるなんざ、妙な話だろ。」

「ゆりちゃんが最初のパーティに在籍するようなものですね。」

そして時間は流れ、あるとき、弾んだ声が堂内に響いた。

「やっつけちゃいました!」

しろは画面を見せつけてきた。半信半疑で、それでいて、食い入るように見てみれば、主人公が犬の上で剣をその背中に突き刺して誇らしげに立っていた。
しろがボタンから指を離し、再度挑戦しろと言わんばかりに差し出す。だが、さらに難しくなっていることに代わりはないだろう。「・・・お前がやればいいだろ?」と目で言う。モニターには、青い空白い雲緑の野原のステージに、人間でもない”わたがしの化け物”のような形の標的が惑っていた。数分、しろとのにらみ合いが続いたが、結局折れたのは自分であり、十字スティックを押し込み、道を進みだした。

「・・・今度は、同じことの繰り返しじゃねぇか。」

次のステージの画面に現れるのは、基本的には皆が敵であった。時折、敵に混ざって人間がやってくる。問題なのは人間の中に凶器を持っている者がおり、話しかけようとすると、凶器をふるってくる。タチが悪かった。作業のような展開に面倒くさくなり、左から右へ、斬られる前に斬るつもりで走りだした。だが、仕事がいい加減になった結果、木こりの一般人を倒してしまった。画面全体が赤く染まり、「あと0人」との警告が出た。

「死体は誰が片づけるんでしょう?」

隣人が、端から聞けば物騒なことを言う。

「お金もかかるでしょうし。」

「・・・支援金が入るんだろ。」

勇者が訪れた村だぜ?100年は観光資源になってくれるだろと、小さく肩をすくめてみせた。それ以前に、これはゲームなんだと前置きすることは忘れなかった。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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