【小話】碧い知識【更新】

「大変です、アオミドロが混入しているらしいです!」

「・・・入っていたとしても、肉眼で確認できねぇだろ。」

騒ぐ青年は、掌に少し余る菓子箱を、指先が白くなるほどに握って目前に突きつけてきた。白地の背景に黒く堅いフォントで、その本質が羅列されている。派手な外装と華やかな名前をまとった企業を代表する戦士の、知られざる本性が、余すところ無く書かれている。公式プロフィールだろうから、どこまでが真実かは素人の自分には見抜けやしないが。眼鏡を正しい位置に調節し、細やかな文字を追う。しかし、某微生物の名前はない。「わかんねぇよ」と肩をすくめてみせれば、「ここですよ、ここ!」と、しろは指で指し示した。

「・・・プラ何とか化合物って書いてるぜ?」

「あれ?見間違えたみたいですね。」

手首を返し、黒蝶堂の電灯に光を当てたしろは、菓子箱の裏面に熱視線を浴びせた。煙を立たせ、穴を空けようとしているのかと疑いたくなるほどに見入っている。「なんでなんですかね?」と続ける彼に、「そりゃ、微生物は含まれないだろ。」と応えれば、しろは首を左右に振った。

「アオミドロは習いましたよね。」

だけど、このなんちゃら化合物というのは、アオミドロよりも遠い存在なんでしょうか。選ばれるのは難しいんでしょうねと、小分けにされている封の一つを切った。

「・・・そっちかよ。」

しろは口を動かし、黙って菓子を胃に収めた。その一つをよこしてくる。同様に口を切ると、彼はにこにこと笑い、ずいと顔を寄せてきた。

「僕の成分も、背中に書いておきましょうか?」

「・・・かき混ぜたら、氷山しろの出来上がりか。」

恐ろしいレシピを想像させるんじゃねぇよと、菓子を咀嚼しながら、彼の提案をすげなく却下する。冷たくあしらったつもりであったが、しろは笑顔を絶やさず、「書きだしてみましょう!」とペンを取った。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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