【小話】赤紫の免許皆伝【更新】

「蜜をよく舐めてましたね。」

「・・・随分と、昔の話だろ。」

黒蝶堂の中庭を横断中、鼻歌交じりのしろは足を止めた。背の低いずんぐりとした木々の集合体が、5の花弁を広げた花によって隙間無く埋め尽くされている。その一つに顔を寄せた。

「・・・この味噌汁は、まさか。」

「まさに、躑躅燃ゆな色です。」

その日の夕食に登場したるは、色の鮮やかな、かつ、匂いの味噌な吸い物であった。箸を動かしていたはちは、そのちぐはぐ具合に平衡感覚を失い、箸を取り落とした。くたっとしおれたそれは、鍋で煮た白菜のような外見である。しばしの逡巡を経た彼は、やはり、空腹には抗えないなと腹をくくる。目をつぶり、それを口に運んだ。予想に反し、味は問題ない。飲み込もうとした。そのとき、

「毒性があるのでしょう。」

少女の声が、口中のツツジを再度開花させた。
涙目のはちがしろを見れば、彼は得意げに

「僕、なんと免許を持っているんです。」

どこからともなく、免許証サイズのプラスチック製であろう板を提示した。
”躑躅調理師免許”と上部に書いてあるそれには、彼の顔写真と共に、有効期限が併記されている。どうやら次の更新予定日が迫っているようで、「・・・一応は、有効なんだな?だよな?」と、藁にもすがる思いで、彼に返答を求めた。

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秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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