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【小話】迷いの森の伝言板【更新】

「出ましたよ!」

「・・・またかよ。」

黒川はちは軍手に火ばさみを携えて、声の方へと向かう。黒蝶堂の書物の森の端へ赴けば、同居人が壁を指さし騒いでいる。視線をやれば、そこには必要以上に多いのではないかと思われる程の足を持つ、体長20センチぐらいの生き物が壁を這っていた。はさみの先を揃え、相手の軌道を読み、タイミングを計って腕を伸ばす。体を丸める動作が気味の悪さを助長させる。それをなるべく視界におさめぬようにし、同時に左手でやかましい同居人の首根をつまみ、中庭へ続く廊下へ出ると、それらをまとめて庭へと放った。

「違いますよ!」

同居人・しろは憤慨する。白い蒸気が、彼の両サイドから噴きでているかのように漫画的で、ふざけた雰囲気ではある。はちが平謝りすると、

「壁のメッセージを見ましたか?」

と空を見上げ、鼻から息を吸い込んだ。

はちは黒蝶堂に戻り、再度書物の森を歩き出す。片づけなければと思いつつも、理由は色々あって、なかなか作業に取りかかれない。しろの言葉を確かめるため、さきほどの場所へ行く。虫の居たのはこの辺だったかと目を凝らすと、壁の一部分が変色している箇所があった。毛虫の這った痕のようなそれは、よくよく眺めてみると、薄い青色に縁取られた文字になっていた。

”よる、こうえんにてまつ”

「・・・わけが、わからねぇ。」

はちは書棚を見上げる。黒蝶堂の憑者と宣う少女の姿はない。ため息が出た。

公園に到達するとすぐ、待ち人に会うことができた。
月光に照らされる少年は、夜半の公園には似つかわしくないなと、はちはぼんやりと思った。少年は弱々しい口調で「助けて、堂長」と、ブランコを強く握る。

「僕も、つまみ出された。」

堂長は、一層の深いため息を吐く。

いったい、自分が何をしたというのだろうか。見ず知らずの子どもの面倒を何故、自分が見なければならないのだろう。

だが、まさか彼を火ばさみでつまみあげ、警察に突き出すわけにもいかない。肩をすくめる。仕方が無い。とりあえず一度、事情を聞くことにした。堂に行くぞと手を伸ばす。道中、しくしくと涙を流す彼の足音が、明らかに1人分ではないことに気が付いてしまったが、足下を極力見ず、頭を振って目的地だけをめざした。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

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