【小話】一な花丸【更新】

「ー人でしたね。」

「・・・0人だろ。」

「だから、ー人です。」

「・・・だから、0人だ。」

今日も今日とて、彼との会話はかみ合わないなと、首をひねった。永いこと隣人をつとめているというのに、だ。

本日のお客様数と題されたフリップを立てた隣人は、伸びそうな程勢いよく、首を左右に振る。「僕のことを見てください」と主張する、まぶしくうるさい彼の青い視線を見返せば、「ほらほら」と台紙が更に迫ってきた。仕方がないと、観念する。首を斜めに向ける。体を横に倒す。手にしたフリップを逆さまにする。しばし眺め、

「・・・まさか。」

それらしき答えが頭に浮かんだ。

「そうですよ。」

発する前、しろは人差し指で大気の層に断絶を入れるかのごとく、横一文字を切った。意図したのは、斜線や空欄のようなものかと理解を揃えた。

「・・・結局、答えは同じだったってわけか。」

合致は僥倖だが、歴然たる事実に「哀しくならないか?」と問われれば嘘になるなと、ため息が出た。まぁ、誰も問いやしないが。

フリップに赤で花丸を書き入れたしろは、

「ないことを表現するのは、難しいですね。」

腕を組み、おおげさにうなってみせた。

スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

説明

秋雨

Author:秋雨
人間と憑者のライトホラー物語。

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

メニュー
twitter
    更新情報配信中