スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【小話】赤青の勝負【更新】

「ちょっと頼まれてくれませんか?」

同居人は堂長席でぼうとしているはちの前にずいと進み出て、あれとこれとそれと、と、指を折り始めた。

「・・・ちょっとまて、買い物か?」

はちの問いに、同居人・しろは頷く。はちは、不信感を抱いた。黒川家の家事一切は過去の諸事情により、同居人・しろに一任されており、掃除、洗濯はもとより、買い物もその中に含まれているはずだ。

だが、しろはにこやかに、爽やかに断言する。

「はち、暇そうですから。」

「・・・悪かったな。」

「たまには気分転換に、外出したら如何?」

書棚の上から降ってきた言葉に、はちは「あぁ」と得心する。おおよそ、ゆりがしろに助言したのだろう。「入れ知恵」といってもいいかも知れない。だが、少女の言葉に逆らって、今までよい結果が残せたことがあろうか。いや、ない。

「・・・わかった、行ってくる。」

机の片づけをそこそこに、はちは指折られた食品や日用品を思い出しながら渡された財布を懐にしまい、買い物へと向かった。



帰宅したはちの手には、買い物の成果が2つのビニール袋となってあらわれていた。
その中身を全てあらためたしろは、

「牛乳とかお豆腐とか、なにか白いものが無いと僕の白さが保てません!」

と、唇をわなわなと震わせて、青い瞳を揺らした。

「・・・消しゴムでも食ってればいいだろ。」

はちは堂長席で、しろの冗句に適当に応じつつ、メモでも取っていけばよかったなとコメカミを指で掻いた。

数時間前、入店した瞬間、何を買えばよかったのか、すっかり頭から抜け落ちてしまったのだ。あれやこれやと思いだす努力はしてみたのだが、頭は痛くなる一方で、一度しか聞いていなかったおつかいの内容を完璧に思い出すのは不可能であった。



後日。

「少し頼まれてくれないかしら?」

昼時、はちとしろがお茶を飲んでいるとき、ゆりが割って入ってきた。彼女が頼んできたのは、細々とした物の購入であった。あれとこれとそれと、と、語る彼女にデジャブを覚えるはちは、慌てて引き出しを開け、紙とペンを取り出す。ペンを走らせ終わると、「これで全部だな」と彼女に内容を見せ、確認をとった。彼女は「いいわ」と許可を出し、黒蝶堂を出て行った。

すると隣に、屈伸をするしろの姿があった。彼は飄々とした風で

「はちには、任せていられませんからね!」

これまた爽やかに笑って見せた。彼はメモを取るはちを横目に、なんの下準備もせず、30項目以上の買い物に出かけようとしている。

「・・・なんだと?」

メモを手に、「お前には負けるわけにはいかねぇ、いや、負けるわけがねぇ」と、はちは眉間にしわを寄せた。

2人の視線がぶつかり、赤と青の火花が飛び散る。
彼らが黒蝶堂を飛び出たのは、ほぼ同時であった。



結果は、引き分けであった。
それぞれが完璧に、彼女の要望を満たす買い物を完了して黒蝶堂に帰ってきた。

はちは腕を組み、じいとしろを横目で見た。

「お前、実は、ひかえていたんだろ?」

「いいえ、ソラで覚えていたんです。」

「・・・覚えるのに、コツがあるのか?」

はちが言うと、しろは首を左右に振って、左手の人差し指を立て、「忘れないでください」と、はちの目を正面からじっと見つめ、大切そうに言葉を紡いだ。

「僕は、一度見たものは二度と忘れないんですよ。」

「・・・そんなことが」

「・・・これは、どういうことかしら?」

はちがしろの言葉に反応しようとしたその時、堂内の奥からゆりが歩いてきて言った。
どうやら先に帰っていたようだ。彼女は両者と、同じ物が二つずつ並ぶ机の上を確認し、

「貴方たちには、協力という言葉を知ってもらう必要があるのね。」

と、冷たい口調で言い放ち、飛び上がって、彼らの頭を書物の角で軽く小突いた。
彼らはそれぞれにうめき声を上げる。
が、彼女は涼しい顔で、机に向かった。机の上に広げられた、同一の2つを両手に掲げる。だんだんと彼女の瞳が赤く染まっていく。2つを胸の前で重ね合わせるようにする。すると、それらは一回り大きな、1つの物に合体したのであった。


【了】

スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

説明

秋雨

Author:秋雨
ランキング参加中


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

ブログランキング!
人間と憑者のライトホラー物語。

黒蝶堂本堂は こちら

現実世界その他諸々の事象とは、一切関係ありません。著作権は放棄していません。なにかありましたら拍手からお願いします。

【管理人】

秋雨。成人済。

【主な登場者紹介】

黒川 はち

古書店黒蝶堂堂長。
気苦労の絶えない受難者。

氷山 しろ

黒蝶堂副長。
電波的言動の目立つ青年。

ゆり

黒蝶堂憑者。
冷静沈着な少女。

深見ヶ原 牡丹

深見ヶ原墓地憑者。
猪突猛進イノシシ娘。

カコ

川辺の憑者。
人間嫌いで鬼桐の部下。

鬼桐

煙草が手放せない隊長。
熱くなると誰にも止められない。

黒川 伊織

はちの祖父で先代堂長。
3年前に他界。

来訪者数
メニュー
更新記事
twitter
    更新情報配信中
    リンク
    QRコード
    QRコード
    ブロとも申請

    この人とブロともになる

    検索
    RSSリンクの表示
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。